第163章 東山裕は客人

浜田統介は断った。「そんなに気を遣わなくていいよ。今は君と桜が離婚したから、私もあなたの孝行を受けるのは気が引けるんだ」

東山裕は落ち着いた態度で、「私と海野桜が夫婦であるかどうかに関係なく、私の目には、あなたは尊敬と孝行に値する方です。おじいさん、私は本当にあなたに孝行したいんです」

浜田統介はそう言われて、もう断るのを止めた。

「そうか、では君に任せよう」

「当然のことです」

海野桜はずっと黙ったまま、東山裕と向き合うことも避けていた。

彼女は急いで食事を済ませ、箸を置いた。「おじいちゃん、ゆっくり食べてて。私はテレビを見てきます」

浜田統介は彼女を呼び止めた。「お客さんがいるのに、テレビとは何事だ。台所に行って果物を切ってきなさい。私と裕は居間で少し話をする」

「……はい」海野桜は不本意ながら台所へ向かった。

でもおじいちゃんの言う通り、東山裕はお客さんだから、お客さんとして扱えばいいだけだ。

海野桜は果物を切って居間に持っていった。

彼女が果物を置いた途端、東山裕は突然彼女に尋ねた。「大学に行きたいんじゃなかったの?どの学校に行くか決めた?」

海野桜は彼が突然話しかけてくるとは思わず、一瞬戸惑った。

「まだです」彼女は素っ気なく答えた。

東山裕は続けて言った。「どの学校に行きたいか私に言ってくれれば、直接入学できるようにしてあげられる」

「結構です。おじいちゃんが手伝ってくれます」海野桜は彼の好意を断った。

浜田統介は正直に言った。「おじいちゃんも必ずしも手伝えるとは限らないよ。全ての学校に影響力があるわけじゃない」

「じゃあ、おじいちゃんが手伝える学校に行きます」

東山裕は真剣な表情で言った。「勉強したいなら、真剣に取り組むべきだ。最高の学校に行けるなら、それに越したことはない」

「どうでもいいです。どうせ私の成績は悪いし、一流大学に行っても意味ありません」海野桜は再び彼の好意を断った。

浜田統介は再び彼女の言い分を否定した。「裕の言う通りだ、桜。大学に行くなら当然最高の学校に行くべきだ。成績が良くなくても、一流大学なら何かしら学べるはずだ」

「おじいちゃん、今はまだ大学に行きたくないの。もう少し時間を置いてから考えます」