しかし、彼女にキスしたい気持ちが強すぎて、どうしても抑えられなかった。
特に、彼女が彼を不愉快にさせる言葉を聞くと、さらにコントロールできなくなった。
だから、これは彼のせいではない。すべては海野桜が彼を怒らせたからだ!
しかし結果的に、彼が彼女を怒らせてしまった。
でも、部屋に入れないなんて、それは彼女の一存で決められることではない。
何かを思いついたのか、東山裕は思わず得意げな笑みを浮かべた。
海野桜が怒りながらリビングに入ると、おじいちゃんがソファに寄りかかって胸を苦しそうに叩いているのが見えた。
「おじいちゃん、どうしたの?!」海野桜は驚いて急いで確認しに行った。
浜田統介は手を振って、笑いながら言った。「大丈夫だよ。ちょっと疲れているだけで、急に具合が悪くなっただけだ。」
「どこが具合悪いの?病院に行って検査しましょう!」
「必要ない。おじいちゃんは健康だから、心配するな。何でもないよ。」
海野桜はまだ心配で、「本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。おじいちゃんは良く眠れているし、食事もちゃんと取れているし、毎日運動もしているんだ。何の問題もないさ。それより、お前は大丈夫か?」浜田統介は彼女の腫れた唇を見て、少し困ったように笑った。
海野桜は驚いて、「私?私がどうかしたの?」
老人は答えずに、別の話題を切り出した。「お前と裕は離婚したけど、彼は本当にお前のことを考えているんだ。明日、学校に行って入学手続きをしなさい。」
海野桜は憂鬱そうに座って、「おじいちゃん、私は彼の好意を受け入れたくないの。」
「どうして?」老人は不思議そうだった。
海野桜は正直に言った。「離婚を望んだのは私で、もう彼とは何の関係も持ちたくないの。完全に縁を切りたいと思っているなら、彼からの恩恵は一切受けるべきじゃない。それに、私だって学校に行く方法はあるわ。なぜ彼の好意を受け入れなきゃいけないの?情けは人のためならず、それは私が彼の前で立場を弱めることになるだけよ。」
浜田統介は同意して頷き、嬉しそうに言った。「うちの桜はいつもこんなにはっきりと善悪を見分け、自分の立場をしっかり持っている。おじいちゃんは誇りに思うよ。でも、おじいちゃんはまだ彼の提案を受け入れてほしいんだ。」