幸い東山裕は今のところ良い振る舞いを見せているが、そうでなければ彼は決して黙っていないだろう。
東山裕が海野桜のために道を開こうとしているのなら、彼は拒否するはずがない。
海野桜がどう考えているかに関係なく、とにかく彼は一つの道理しか認めない。東山裕の手配が海野桜にとって百パーセント有益であればいいのだ。
有益なら彼は受け入れ、海野桜にも強制的に受け入れさせる。たとえ彼女が嫌がっても。
なぜなら彼は知っている。いつか海野桜は今の選択のおかげで、良い人生を送ることになるのだと。
海野桜は彼の意図を大体理解していたが、本当に受け入れたくなかった。
しかし、おじいちゃんの深い思いやりがあり、彼女は受け入れなければならなかった。受け入れないわけにはいかなかった。
よく考えた末、海野桜は福岡大学に進学する手配を受け入れることにした……
……
翌朝早く、海野桜は福岡大学に入学手続きに向かった。
おじいちゃんは一緒について来なかった。これからは自立を学ぶべきだと言われた。
海野桜も来てほしいとは思わなかった。
橋本友香と約束していたので、橋本友香が一緒にいてくれれば十分だった。
橋本友香は早くから学校の門の前で待っていて、車から降りてきた海野桜を見つけると、嬉しそうに駆け寄ってきた。
「桜ちゃん、本当に福岡大学に来るの?昨夜そう聞いて、すごく嬉しくて、まだ夢みたいな気分なの。」
実際、海野桜自身も現実感がなかった。
彼女は笑って言った。「本当よ。ほら、これが合格通知書。」
彼女はバッグから合格通知書を取り出して渡した。
橋本友香は見て、嬉しそうに言った。「私たちの福岡大学の合格通知書ね。桜ちゃん、すごいわ。この合格通知書はどうやって手に入れたの?」
二人は互いをよく知っていたので、橋本友香はこの合格通知書が特別なルートで得られたものだと分かっていた。
海野桜は少し恥ずかしそうに咳払いをして、「東山裕が手配してくれたの。彼が無理やり来させたから、来ることにしたの。」
「離婚したのに、まだこんなに優しくしてくれるの?」橋本友香は羨ましそうだった。「桜ちゃん、東山裕は本当に桜ちゃんのことが好きなんじゃない?離婚したのに、どうしてこんなに助けてくれるの?」
「養育費を要求しなかったから、これは補償なのよ。」海野桜は淡々と言った。