第173章 私を家まで送ってくれない?

「桜ちゃん、私たち二人でこんなに多く頼んで、食べきれるの?」橋本友香は少し心配そうに尋ねた。

海野桜は幼い頃からお金の使い方を知らなかったが、いつもこんな風に使うわけではなかった。「食べきれなくても大丈夫よ。美味しければいいの」

「私も割り勘で払うわ」橋本友香が提案した。

海野桜は手を振って、「いいの、おじいちゃんからもらったお小遣いを、たくさん貯めてあるの。使い切れないくらいよ。適度に使うのは問題ないわ。とにかく今日は私のおごり!」

橋本友香は微笑んで、もう争わなかった。「桜ちゃん、よくここに来て食べるの?」

海野桜は首を振った。「そうでもないわ。一、二ヶ月に一回くらいかな」

ただし以前は、いつも東山裕のお金で食べていた。

橋本友香は何かを思い出したように、微笑んで言った。「お兄さんもよく来るわ。みんなここが好きみたいね」

「当たり前よ、だってここが一番美味しいんだもの」海野桜は東山裕もここが好きだということは言わなかった。

東山ビルがすぐ隣にあるから、彼がここで食事するのは便利で、まさにここの常連だった。

接待があれば、ほとんどここを選んでいた。

海野桜は確かに東山裕のことをよく知っていた。彼は今もここで接待中だった。

……

最近、東山は政府と大きな協力案件があり、東山裕は今夜、市長をはじめとする重要人物たちをここで接待していた。

今回の協力は非常に重要で、利益も特に大きかった。

政府が直接東山との協力を選んだのは、東山裕が施設の無償建設に出資し、上層部を喜ばせたからだった。

上層部が喜べば、自然と良いことは全て彼に向けられる。

東山裕は数人を連れて接待に来ており、その中には林馨もいた。

市長が施設の状況について尋ねたいということで、主任設計師である林馨も呼ばれていた。

接待では当然お酒を飲む。

林馨は酒席で唯一の女性で、しかもとても美しい女性だったため、結果は想像できるように、彼女は多くのお酒を勧められた。

東山裕は決して飲酒で商談をすることを主張しない。

しかし今回の協力は並々ならぬものだったため、疎かにはできず、林馨も接待の仕方をよく心得ていたので、たくさん飲んでいた。

他の人々は皆たくさん飲んでいたが、東山裕だけが冴えていた。