海野桜も教科書を取りに行った。
こうして、彼女は東山裕を家庭教師として受け入れることになった。
でも、あくまでも先生としてだけ!
彼女は勉強の時だけ彼と話し、それ以外は一言も余計な言葉を交わさなかった。
毎日勉強が終わると、すぐに立ち去り、決して長居はしなかった。
海野桜は彼との境界線を厳格に引き、彼に一切の期待を持たせなかった。
彼女が去るのを見送るたび、東山裕の目は暗く沈んでいた。
彼は思いもしなかった。海野桜が本当に彼との関係を断ち切り、一片の望みも残さないとは……
海野桜はそういう決断力のある人間だった。
愛するなら深く愛し、愛さないなら躊躇なく背を向けて去る。
あいまいな関係や未練がましい態度など、彼女は一顧だにしなかった。
今の東山裕の優しさなど、なおさら必要としていなかった!