第172章 彼女はこれほど狂気

海野桜も教科書を取りに行った。

こうして、彼女は東山裕を家庭教師として受け入れることになった。

でも、あくまでも先生としてだけ!

彼女は勉強の時だけ彼と話し、それ以外は一言も余計な言葉を交わさなかった。

毎日勉強が終わると、すぐに立ち去り、決して長居はしなかった。

海野桜は彼との境界線を厳格に引き、彼に一切の期待を持たせなかった。

彼女が去るのを見送るたび、東山裕の目は暗く沈んでいた。

彼は思いもしなかった。海野桜が本当に彼との関係を断ち切り、一片の望みも残さないとは……

海野桜はそういう決断力のある人間だった。

愛するなら深く愛し、愛さないなら躊躇なく背を向けて去る。

あいまいな関係や未練がましい態度など、彼女は一顧だにしなかった。

今の東山裕の優しさなど、なおさら必要としていなかった!

海野桜の最大の長所は、決めたことや人に対して、諦めずに貫き通すことだった。そうでなければ、前世でも東山裕への愛を諦めずに持ち続けることはなかっただろう。

だから今世では、彼から逃れるために、同じように諦めずに頑張れるのだ。

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海野桜は毎日深夜まで必死に勉強し、休憩時間10分も無駄にせず、食事中も本を読んでいた……

毎日必ず図書館に夜7時まで居続けた。

彼女の必死さは、橋本友香を驚かせた。

あっという間に一週間が過ぎ、金曜日となった。

海野桜と橋本友香は午後に授業がなく、二人で図書館に夜7時過ぎまで居た。

「友香、今日は私が食事を奢るわ、どう?」図書館を出ると、海野桜は非常に嬉しそうに言った。

全体的にとても晴れやかな様子だった。

橋本友香は不思議そうに尋ねた。「桜、すごく嬉しそうね」

「そうよ、とても嬉しいの!」

たった一週間で東山裕が設定した第一段階の学習計画を完了したからだ。

東山裕は、第一段階を完了すれば一ヶ月は彼女を邪魔しないと約束した。

今夜から彼から解放される。一時的とはいえ、それだけでとても嬉しかった。

「どうして嬉しいの?」橋本友香は笑って聞いた。

「気分がいいだけよ。万味亭に食べに行きましょう!」海野桜は詳しく説明したくなく、ただ祝いたかった。

橋本友香は驚いて、「万味亭はすごく高いわよ」