「……分かりました」林馨は辛そうに言って、電話を切った。
東山裕は深刻な表情になった。
海野桜は彼の様子を見て、淡々と言った。「用事があるなら先に行けばいいわ。私のことは気にしないで」
東山裕は立ち上がって言った。「ちょっと電話してくる」
そう言って彼は立ち去り、海野桜は何が起きたのか分からず、困惑していた。
でも彼の様子を見ると、良くないことが起きたようだった。
東山裕は外に出て林馨に電話をかけ、一体何が起きたのか聞こうとしたが、電話は通じても誰も出なかった。
2回かけても、林馨は電話に出なかった。
彼の電話にも出ないということは、明らかに何か問題があった……
東山裕は眉をひそめ、心配になった。林馨のことを心配しているわけではなく、自分の知らないことが起きているのではないかと心配していた。
しかし林馨が電話に出ない以上、何も分からなかった。
海野桜が少し食べていると、東山裕が戻ってきた。
彼は平然と彼女の隣に座り、自ら言った。「何でもないよ。まず朝食を一緒に食べて、それから学校まで送るよ」
海野桜は箸を置いて、「もう食べ終わったわ。あなたは食べて。私は自分で学校に行くから」
「送るよ」東山裕は彼女の拒否を許さない口調で言った。
そして彼も朝食を食べずに、彼女を学校まで送った。
車はすぐに校門に着き、海野桜はシートベルトを外し、ドアを開けて降りようとした。
突然手首を掴まれた。
彼女は不思議そうに振り返って、「何?」
東山裕は深い眼差しで、何か言いたそうだったが、話題が見つからなかった。
少し沈黙した後、低い声で言った。「勉強を頑張りすぎないで。まだ一年生なんだから、勉強する時間はたくさんあるよ」
「分かってるわ」海野桜は淡々と答えた。
「帰る時間が分かったら、夕食を食べに行くために迎えに来るよ」
「必要ないわ。そんなことしなくていい!」海野桜は彼の手を振り払い、車を降りて、振り返ることなく校門の中に入っていった。
東山裕は彼女の後ろ姿を見て、やっと気付いた。以前の自分が彼女に対してどれほど冷たかったかを。
しかし彼は彼女の態度を気にしていなかった。時間が経てば、きっと彼女の気持ちも変わると信じていた。
でも次の瞬間、また林馨のことを思い出した。
東山裕は電話をかけたが、まだ誰も出なかった。