第177章 狂おしいほどの愛

言い終わると、海野桜は彼を突き放した。

今回は、彼は簡単に押しのけられた。

海野桜は彼の極めて醜い表情を見ようともせず、足を上げて歩き出した。

「それなら一生気持ち悪がればいい」東山裕の声が突然響いた。

「……」

海野桜は急に足を止め、振り返った。

背の高い男性は街灯に背を向け、彼の顔は影に隠れ、何故か不気味で怖かった。

海野桜は背中に冷たさを感じた……

「どういう意味？」彼女は不安げに尋ねた。

東山裕はゆっくりと顔を上げ、瞳の色は恐ろしいほど黒かった。「意味は簡単だ。たとえお前が気持ち悪がっても、一生気持ち悪がらせてやる！」

「……」海野桜は愕然とした。

本当に一生手放すつもりはないのか？

「海野桜、俺はこれまでどの女にも心を動かされたことはない。お前が初めてだ。だから、手放すつもりはない！」東山裕の低い声は、まるで地獄からの宣告のようだった。

海野桜は急に腹が立った。「私が永遠に気持ちを変えなくても、諦めないの？！」

「ああ！」

「東山裕、あなた頭がおかしいんじゃない？！」

「昔の海野桜も、頭がおかしかったんじゃないのか？」

海野桜は少し戸惑い、視線を逸らして冷たく言った。「その通りよ。あの子は頭がおかしかった。それに頭も正常じゃなかった。とても愚かで無知で、本当に馬鹿だったわ！」

「彼女が愚かだったんじゃない。愚かだったのは彼女が愛した男だ」東山裕は突然彼女の言葉を遮った。

海野桜は急に固まった——

男は足を進めて彼女に近づき、黒い瞳で彼女を見つめた。

「彼は愚かにも自分を深く愛する少女を傷つけ、愚かにも彼女の愛がどれほど貴重なものか気付かなかった。さらに愚かにも、たとえ全世界が彼を見捨てても、彼女だけは離れないと思っていた。

彼は傲慢で、油断していた。心の中では、あの少女が彼の人生を大きく乱したことを恨んでいた。

でも、彼女が自分を愛していないことに気付いた時、彼は初めて、自分が何を失おうとしているのかを知った。彼はそれほど愚かで、失ってから初めて大切さに気付いた。

彼は一生賢かったのに、この世界で最も重大な過ちを犯した。

今は何も求めない。ただあの少女に、やり直すチャンスを一度だけ与えてほしい」