第202章 思うのはやはり海野桜

浜田統介は愕然として「わざとだったのか?!」

海野桜は実は故意ではなかった。先ほど本当に心が乱れていて、少し言葉を選ばずに話してしまっただけだった。

でも、そう言ったことを後悔はしていない。

もしこれで東山裕が諦めて、もう関わりを持たなくなるなら、みんなにとって良いことだ。

なぜなら、彼らはもうこれ以上縺れ合うことはできないから。

彼女は彼の気持ちに応えることができず、彼はますます苦しむだけで、彼女の心も影響を受け、悪循環に陥る。前世で彼に執着した全てと何が違うというのか。

彼女は以前の行いを既に後悔している。だから今世は、感情の縺れで心を消耗したくない。

そう、海野桜には今世でやりたいことがたくさんある。

唯一やりたくないのは、感情に触れることだ。

永遠にやりたくない……

「おじいちゃん、私と東山裕にはもう可能性はありません。これからは私たちの復縁を考えないでください。今の私は、ただ勉強に専念したいだけで、恋愛なんて一切したくありません」言い終わると、海野桜は階段を上がっていった。

浜田統介は彼女の後ろ姿を見て溜息をついた。

彼もこんなことで彼女を悩ませたくはなかったが、事態は今や彼らの手に負えないところまで来ていた。

彼の体調は日に日に悪化し、おそらくあと数年しか生きられないだろう。

海野桜はまだ若く、自立して生活する能力も十分にない。

長男夫婦は東山家を虎視眈々と狙っており、今では必死になって昔失った娘を探している……

自分が死んだ後、海野桜に頼れる人がいなければ、彼らは彼女を放っておかないだろう。

特に東山裕が今彼女に恋をしているという状況で。

利益のために、自分が死んだ後、彼らが桜にどんなことをするか分からない。

海野桜が将来直面するであろう全てを考えると、浜田統介は胸が痛んだ。

しかし今の彼に何ができるというのか?

どちらも大切な存在で、どちらかを諦めることなどできない……

そして両方を満足させる方法を、今でも思いつけないでいる。

自分が死んだ後、子孫たちが争い合うのを避けることは本当にできないのだろうか?

そう考えると、老人の心臓がまた具合悪くなってきた……

***********

海野桜は祖父の考えを知らなかった。