彼が話し終えると、彼の弁護士が一歩前に出て、警察官一人一人に名刺を渡した。
名刺の名前を見て、警察官たちは驚きの表情を浮かべた。
水谷聡、福岡市で最も有名な弁護士だ。
彼が担当した事件は、一度も負けたことがない……
東山裕は時間を無駄にしたくなかったので、林馨に淡々と言った。「こんなことが起きて、あなたも休養と気持ちの整理が必要でしょう。2ヶ月間は通常通り給料を支払います。いつ出社するかは、あなた自身で決めてください。」
林馨の目が震えた。彼女は軽く頷いて、「分かりました。社長、ありがとうございます……」
東山裕はそれ以上何も言わず、立ち去った。
「裕兄!」しばらくすると、柴田治人が追いかけてきた。
東山裕は振り返って、「何だ?」
柴田治人は深い眼差しで彼を見つめ、「本当にお前がやったんじゃないのか?」
東山裕は無表情で、「お前が俺を信じていないとは思わなかった。」
「いや……」柴田治人は首を振った。「ただ、お前が林馨に対してどういう態度なのか確信が持てなかっただけだ。」
「何の態度もない!彼女は俺の目には、ただの東山の社員で、俺の下のデザイナーだ!」
柴田治人は軽く笑った。「分かった。お前が林馨のことを気にかけているのかと思ったよ。お前がそう言うなら、信じるよ。」
東山裕は、今日の林馨の自殺を止めた時の態度が異常だったことを知っていた。
しかし、彼は何も説明したくなかった。
なぜなら、彼自身もなぜそんな行動を取ったのか分からなかったからだ。
まるで、止めなければ取り返しのつかない悲劇が起きるかのように感じたのだ。
しかし、なぜそんな奇妙な感覚を覚えたのか、彼には分からなかった……
おそらく、あの瞬間は突然の異常としか表現できないのだろう。
……
東山裕は病院を出るとすぐに海野桜を探しに行った。
つい先ほど、彼女が彼に会いたくないと冷たく言ったにもかかわらず。
それでも彼は尊厳も捨てて彼女に会いに行きたかった。すべてを説明したかった……
海野桜は橋本友香と別れた後、すぐには家に帰らなかった。
おじいちゃんの誕生日がもうすぐだった。
今日はプレゼントを選びに行こうと思っていた。
海野桜は賑やかな商業地区を歩き回り、多くの店を見て回ったが、おじいちゃんに何を贈ればいいか分からなかった。