第204章 社長様は本当に怖い

海野桜は皆をドアまで見送った。

全員が先に車に乗って行ってしまい、東山裕だけが残っていた。

彼は車のドアの前に立ち、深い眼差しで彼女を見つめ、その目には彼女の存在だけが映っているようだった。

海野桜は彼の視線を避け、淡々と言った。「お気をつけて。私は先に入ります。」

男は突然彼女を引き止め、低い声で言った。「数日で戻ってくるよ、すぐだ。」

海野桜は冷静な表情で、「あなたがどれだけ行くかは私には関係ありません。」

「お土産を買ってくるよ。」

「結構です、必要ありません……」

東山裕は再び勝手に言った。「何かあったら電話してくれ。帰りを待っていてくれ！」

言い終わると、彼は振り返って車に乗り込み、彼女に何も言わせる機会を与えなかった。

海野桜は呆れた。彼は傲慢すぎるのではないだろうか？

東山裕の車が動き出したところで、海野桜が家に入ろうとした時、突然軍用の四輪駆動車が近づいてくるのが見えた。

よく見ると、車の中に見覚えのある顔があった。

海野桜は思わず笑みを浮かべた。

四輪駆動車は彼女の前で止まり、ドアが開くと、相良剛が中から飛び出してきて、彼女に向かって明るく笑った。

「相良兄、どうしてここに？いつ帰ってきたの？！」海野桜は嬉しそうに尋ねた。

「停車——」少し先に進んでいた東山裕が、突然鋭く命じた！

運転手は慌てて車を止めた。「社長、どうされました？」

東山裕は答えず、バックミラーに映る海野桜と相良剛を見つめ、その瞳は漆黒で陰鬱になった。

海野桜と相良剛は笑顔で挨拶を交わし、一緒に門の中に入っていった。

しかし東山裕はまだバックミラーを見つめていた。

「社長、時間がありません。」山田大川は大きなプレッシャーを感じながら小声で注意した。

東山裕は引き返したい衝動を抑えながら、冷たい声で言った。「発進！」

「はい。」運転手は急いで車を発進させた。

しかし東山裕の全身から漂う陰鬱な雰囲気は消えることなく、その眼差しも冷たく恐ろしいものだった。

山田大川はバックミラー越しに彼を一瞥し、すぐに視線を逸らした。

このような社長は本当に怖い……

……

相良剛の突然の来訪に、浜田統介は意外にも喜んだ。

彼は非常に親しみを込めて「おじいさん」と呼んだ。