東山裕はそんなに自分の体を酷使するから、倒れるのも当然だ。
しかも高熱を出して、病状はかなり深刻だった。
彼はすぐに病院に搬送され、海野桜も一緒に付き添った。
医師の懸命な治療の結果、東山裕の容態はようやく安定した。
ただし医師は彼らに、このように体を大切にしないことは二度とさせないように注意を促した。さもないと深刻な結果を招くと。
鴻野美鈴は東山裕に対して心配と不満の両方を感じていた。
しかし彼女は分別があり、東山裕がこうなったのは海野桜のせいではないと分かっていた。
責めるとすれば、自分の体を大切にしない彼自身を責めるべきだ。
それでも彼女は海野桜の手を取り、真剣に尋ねた。「桜さん、あなたも見たでしょう。裕はあなたのことが大好きなの。彼は父親と同じで、簡単には感情を動かさない。でも一度好きになったら、諦められないの。一つだけ聞かせて。あなたは本当に彼に対して何の感情もないの?」
海野桜は彼女の真剣なまなざしの下で、困ったように、かすかにうなずいた。「はい、もうありません。」
鴻野美鈴は驚き、すぐに失望の表情を浮かべた。
「これでは裕は一生救われないわね。」
「……奥様、申し訳ありません。」海野桜は何故か謝罪の言葉を口にした。
東山裕を好きになれないことを謝るのではなく。
ただ、いつも自分に親切にしてくれた義母を失望させてしまったことに罪悪感を感じて……
鴻野美鈴は悟ったように笑みを浮かべた。「自分を責める必要はないわ。恋愛に正解も間違いもないものよ。たぶん二人は縁がなかっただけ。でも、裕は簡単には諦めないと思うわ。」
「……」海野桜は何を言えばいいか分からず、黙っていた。
鴻野美鈴は彼女の手を軽く叩き、寛容に言った。「今日は大変だったわね。もう帰りなさい。裕の体は心配しないで、私たちがしっかり看病するから。」
「……では、失礼します。」海野桜は軽くうなずき、背を向けて立ち去った。
病室の入り口まで来たとき、鴻野美鈴が突然また口を開いた。
「桜さん、こんなお願いをするべきじゃないのは分かっているけど、もし可能なら、もう一度二人でチャンスを与えてほしいの。」
海野桜は振り返らず、ただ一瞬足を止めただけで立ち去った。
病院の廊下を黙って歩きながら、海野桜の心情は複雑だった。