第215章 私たちは諦めきれない

医者と看護師は現場を片付けて、立ち去った。

彼らが去るや否や、海野桜は暴れ始めた。「離して——」

彼女の手首は、まだ東山裕に掴まれたままだった。

男は彼女の抵抗を感じ取り、さらに力を込めた。海野桜は何度か暴れたが、振り解くどころか、手首が折れそうな痛みを感じた。

まったく、もう死にそうなのに、どうしてこんなに力があるの?

海野桜は不機嫌そうに彼を見つめた。「東山裕、一体何がしたいの?手を離してくれない?」

「お前が自分で帰らなかったんだ」東山裕は彼女を見つめ、唐突に言った。

「……」海野桜は理解すると、思わず冷笑した。「よく嘘がつけるわね。今すぐ手を離せば、私はすぐに帰るわよ!」

「さっきチャンスをあげただろう!」東山裕は唇を引き締め、明らかに彼女に去る機会を与えたのに、彼女が自分で戻ってきたという意味を込めた。

でも、なぜ戻ってきたの?それは彼が策を弄し、卑劣な手段を使ったからだ。

海野桜は本当に彼が最低だと感じた。

「東山裕、これって面白いの?私を一生引き止めておくつもり?」

男の眼差しが一瞬で暗くなった。「できるものなら……」

彼は彼女を一生引き止めておくことを厭わない、永遠に離さないつもりだ。

海野桜は不意に彼の危険な気配を感じ取り、心が乱れた。

「やめて!」彼女は思わず叫んだ。

東山裕は陰鬱な目で彼女を見て、思わず歯を食いしばった。「海野桜、俺がそんなに嫌いなのか?」

海野桜は素早く冷静さを取り戻し、淡々と言った。「嫌いじゃない、ただ一緒にいられないだけ」

「どういう意味だ?」彼女の言葉を聞いて、東山裕の心に期待が芽生えた。

嫌いでないなら、それでいい……

海野桜は視線を逸らした。「私たち、合わないのよ。気付いてないの?」

「どこが合わない?」

「全部よ。最初から最後まで全部合わない」

東山裕は不機嫌そうに眉をひそめた。「どこが合わないのか、はっきり言え!今日はっきりさせないと、手は離さないぞ!」