第216章 彼に一縷の機会を

海野桜は少し驚いて、「どういう意味?」

彼は深刻な眼差しで彼女を見つめた。「お互いの気持ちが通じ合えないなら、私たちは納得できないだろう。死んでも心残りになるはずだ、そうだろう?」

「……」

東山裕は唇を噛み、乾いた唇を開いて掠れた声で苦しそうに言った。「海野桜、私は自分勝手だ。死んでも心残りになりたくない。だから、一度だけチャンスをくれないか……この貴重なチャンスは、あなたにしか与えられないんだ。」

海野桜は彼の目に宿る期待と懇願の色を見て、衝撃を受けた。

この男は、本当に彼女が知っているあの高慢で近寄り難い東山裕なのだろうか?

これは彼が初めて彼女に懇願することではなかった……

彼がここまでできるなんて。

海野桜の心は突然複雑になり、奇妙な酸っぱさも感じた。

誰のために悲しんでいるのか、彼女にも分からなかった。

ただ分かっているのは、以前彼を狂おしく愛していた時、最大の願いは彼に一目でも見てもらうこと、少しでもチャンスを与えてもらうことだった。

彼女の望みはそれほど大きくなかった。ほんの少しの応えがあれば良かったのだ。

いや、彼が彼女に彼を愛するチャンスを与えてくれて、完全に拒絶しないだけで十分だった。

そのチャンスを得るためなら、命さえも捧げる覚悟があった!

でも待ち続けても叶わず、死の瞬間まで、絶望した魂は泣き続けた。

今世では愛していないけれど、前世で骨の髄まで、魂の奥底まで刻まれた悲しみは消すことができない。

今世でも完全には解放されないと、彼女は確信していた。

そして彼を見るたびに、どんなに抑えようとしても、心は隠れて痛むのだった。

彼女の魂は本当に苦しんでいた……

おそらく神様が彼女を哀れに思い、新しい命を与えてくれたのだろう。さらには東山裕にも報いとして、彼女のために叶わぬ恋の苦しみを味わわせたのかもしれない。

しかし、彼女には復讐の快感も、得意げな気持ちも、傲慢さも一切なかった……

できることなら、彼が昔のような冷たく無情な東山裕のままで、今のように深く愛に落ちた彼ではないことを願った。

なぜなら、彼女は叶わぬ恋の苦しみを知っていた。身をもって経験したからこそ、彼の気持ちを完全に無視することができなかった。

そのため今では、もうこれ以上続けられなくなっていた。