第211章 この戦い、彼は負ける

しかし、彼はただ軽く眉をひそめ、手すりを掴んで苦労して立ち上がった。

その眼差しは、始めから終わりまで恐ろしいほど冷静だった。

「相良君、これは命を捨てることじゃない、負けを認められないだけだ。もう一度だ!」彼はまだ余裕で笑いを浮かべた。

相良剛は目を細め、全身から鋭い殺気を放った!

彼は突然怒鳴り声を上げ、駆け寄って再び一撃で彼を倒し、拳を高く上げ、容赦なく彼の顔面に叩き込もうとした——

「やめて!」海野桜は突然驚いて叫んだ。

相良剛の雷のような勢いの拳は、東山裕の鼻先で止まった。

彼の胸は激しく上下し、目に宿る濃い殺気は抑えようがなかった。

一方、東山裕は目すら瞬かせなかった。

彼の黒く冷たい瞳は、恐ろしいほど冷静だった。

これが相良剛が彼に殺気を向ける理由だった。

なぜなら、彼には東山裕のように、すべてを顧みないことができなかったから!

そう、顧みない。

東山裕は海野桜のために死を恐れないが、彼は海野桜のために東山裕を殺すことはできない。

彼は軍人で、守るべき規律があり、考慮せざるを得ないものがある。

だから東山裕の言う通り、この戦いで彼は負ける……

ただ彼と自分が違うというだけの理由で!

相良剛はゆっくりと立ち上がり、何も言わずにリングを降りて大股で去っていった。

一歩一歩が、とても重かった!

海野桜は彼を呼ぼうとしたが、口を開いても声が出なかった……

「ぷっ——」突然、体を起こそうとした東山裕が血を吐いた。

山田大川は驚いて叫んだ、「社長!」

海野桜も急いで振り向き、立ち上がったばかりの東山裕が血を吐き、再び重く倒れるのを目にした!

「東山裕!」海野桜と山田大川はリングに上がり、彼の状態を確認しに駆け寄った。

東山裕の目は焦点が合わず、死人のように恐ろしい顔色をしていた。

身につけていた白いシャツも、すでに血で染まっていた……

この様子を見て、山田大川は呆然としていた。

海野桜の頭の中も、ガンと鳴った。

「救急車を呼んで!」彼女は即座に山田大川に向かって叫んだ。

「はい、はい……」山田大川は急いで救急車を呼びに行った。

海野桜は急いで東山裕の頭を持ち上げ、ヘッドギアを外して呼吸を楽にさせようとした。

彼女が彼のグローブを外そうとした時、彼女の手首が男の筋の通った手に掴まれた。