東山裕はすぐに焦らなくなった。どうせ彼女を取り戻す自信があったし、彼女は彼のものでしかありえないのだから!
彼女の手を握りしめ、名残惜しそうに言った。「じゃあ、行くよ」
そう言いながらも、まだ彼女の手を離そうとしなかった。
海野桜は完全に困り果てた。「私、勉強に戻らないといけないの。早く行って」
「おやすみのキスは?」
「いや……んっ……」彼女の体が突然引き寄せられ、唇と唇が重なった!
……
夜が更けていた。
海野桜はずっと勉強に集中できないでいた。
手元の北京ダックは冷めていたが、まだ香ばしい匂いが漂っていた。
海野桜は北京ダックを見つめ、ついに勉強を諦めて食べることにした!
満足げに北京ダックを食べ終わると、彼女は寝に行った。
柔らかいベッドに横たわったが、寝返りを何度も打ってようやく眠りについた。きっと北京ダックを食べすぎたせいだ……
翌日は月曜日で、海野桜は早めに起きて授業に向かった。一日中忙しく、勉強というのは本当に頭を使う作業だった。
この日、東山裕からは連絡がなく、海野桜は静かな時間を楽しんでいたが、心の奥では明日の夜のデートを何となく楽しみにしていた。
火曜日、彼女の授業は多く、しかもすべて理系の科目だった。海野桜は大量のデータと公式に頭を悩ませ、東山裕とのデートのことも忘れていた。
放課後になって、突然東山裕から電話がかかってきて、やっとデートのことを思い出した。
「僕は今、君の学校の門の前にいるよ。いつ出てくる?」と東山裕が尋ねた。
海野桜は少し驚いて答えた。「すぐに出ていくわ」
「うん、待ってるよ!」
電話を切ると、海野桜は校門に向かって歩き出し、足取りも少し早くなった。まだ校門を完全に出る前に、遠くから東山裕の車が学校の正門の外に停まっているのが見えた。
豪華なロールスロイスは人目を引き、多くの学生が思わず密かに見物し、スマートフォンで写真を撮っていた。
幸い東山裕は外で待っていなかった。そうでなければ、見物人の数はもっと多くなっていただろう!
海野桜は彼と一緒に見物されたくなかった……
彼女は思わず足を止め、脇に隠れながら携帯を取り出して東山裕に電話をかけた。
「もしもし、出てきた?」東山裕は電話に出るなり尋ねた。