第238章 近江大橋から飛び出す

「お嬢さん、行きましょうか?」運転手が顔を出して彼女に尋ねた。

海野桜は頷き、車のドアを開けて助手席に座った。

車はすぐに発進したが、ナンバープレートには厚い泥が付着していて、数字が見えなかった……

海野桜は住所を告げると、膝の上に本を広げて読み始めた。

今では彼女はいつでも本を読める習慣が身についていた。

海野桜は読書に夢中で、道が浜田家の屋敷からどんどん外れていることにも気付かなかった。

数ページ読んで、もう着くと思った時に顔を上げると、驚いた!

「運転手さん、道を間違えているようですが。」

そう言った直後、海野桜は直感的に何か問題があると感じた。

タクシー運転手は不気味な笑みを浮かべ、「間違えていませんよ。こちらからも行けます、ご安心ください。」

「そうですか?」海野桜は無邪気なふりをしながら、こっそりポケットから携帯を取り出した。