彼女が眠りについてから、目を閉じていた男は目を開き、静かに彼女を見つめ続けた。長い時間が過ぎ去って……
……
夜が明けた。
海野桜は長い間、こんなにぐっすりと眠れたことがなかった。
心地よく目を覚まし、東山裕の姿は見当たらなかった。
海野桜は身支度を整えて階下に降りると、彼が朝食を作っているのを見つけた。本当に意外だった。昨日は夕食を作ってくれて、今日は朝食まで。
海野桜は恐縮するほどだった。
東山裕は彼女が起きてきたのを見て、笑顔で言った。「朝食ができたところだよ。食べようか」
海野桜は近寄って座り、笑いながら尋ねた。「どうして自分で料理を?体調が良くなったばかりなのに、もっと休んだ方がいいのに」
「体は大丈夫だよ」東山裕は切ったベーコンを彼女に差し出した。「たくさん食べて。最近痩せたみたいだから」
「あなたもたくさん食べてね!」海野桜は彼にベーコンを取り分けた。自分ではそんなに食べられないから。
東山裕は再び彼女の皿に戻し、強引に言った。「これ全部食べるんだ!」
海野桜は争うのをやめ、素直に頷いた。「わかったわ」
数口食べたところで、彼が食べずに、理解できない光を湛えた目で自分を見つめているのに気付いた。
海野桜は不思議そうに「どうして食べないの?」と聞いた。
東山裕は微笑んで「君が食べるのを見てうっとりしてしまったよ」
海野桜は少し恥ずかしくなった。彼の甘い言葉は、いつも人を骨抜きにしてしまう。
「早く食べて。食べ終わったら帰りましょう。おじいちゃんは一晩私を見かけなかったから、きっと心配してるわ」彼女は促した。
東山裕は瞳の色を変え、頷いた。「ああ」
海野桜は微笑んで食事を続けた。さらに数口食べた後、我慢できずに尋ねた。「そうだ、あなたはどうやって私を助けたの?これは一体どういうこと?誰かが私たちを陥れようとしているの?」
東山裕は少し躊躇してから、低い声で言った。「食べ終わってから話そう」
「うん」海野桜は急いで食べ始めた。昨日はほとんど何も食べておらず、夜も食べていなかった。
昨夜は空腹を感じなかったが、今はとてもお腹が空いていた。
そして彼女は一気にベーコン一本と目玉焼き一個、全粒粉パン一切れを平らげ、牛乳も一杯飲んだ。
食べ終わって、海野桜は満足そうだった。