第279章 ごめん、遅くなってしまった

……

夜の闇が深く沈んでいた。

薄暗い留置所は骨まで冷え込むほど寒かった。

海野桜は隅に座り、膝を抱えたまま、うつむいて動かなかった。

うとうとと眠りかけた時、突然ドアが開く音が聞こえた。

落ち着いた足音が彼女に近づいてきた……

海野桜の体が少し動き、ゆっくりと頭を上げると、目に入ったのは黒い革靴、そして西洋ズボンに包まれた男性の長い脚……

そして、ぼんやりとしているが、とても懐かしい顔!

それは……東山裕の顔だった!

海野桜は全身を震わせ、まるで自分の目を疑うかのように、彼の顔から視線を離せなかった。

東山裕も暗い眼差しで彼女を見つめ続けていた。

彼は彼女の前まで来てしゃがみ込み、痩せこけた小さな顔を見つめながら、目に隠しきれない痛ましさを浮かべた。

手を伸ばして彼女の頬に触れながら、東山裕は口を開いたが、かすれた声で「海野桜、ごめん……」と言った。