第287章 彼女は痩せすぎた

そして暗闇の中で、彼は誰かが話しているのを聞いたような気がした。

【東山兄さん……こうなることを知っていたら、私は……あなたを愛することはなかったのに……】

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前世の苦しみと絶望を経験した海野桜は、もうこれ以上の苦しみはないだろうと思っていた。

しかし今になって、もっと苦しく、もっと絶望的になれることを知った。

人生最大の苦しみは、求めても得られないことではないのだと。

それは、まるで愚か者のように、どうしようもなく、自分を苦しめるだけの人を何度も何度も愛してしまうこと。

そして最後には完全に心が死に、永遠に取り返しのつかない日を迎えること。

なぜ、もう少し冷酷に、もう少し自分を守ることができなかったのか?

もし彼女も彼のように冷血で情け容赦なければ、今日この状況には至らなかったはずなのに……

でも、なぜ自分はそんなに愚かで、そんなに鈍くて、そこまで冷酷になれないの?!

そう、海野桜はそんな愚かな自分を激しく憎んでいた。

彼女はとっくに知るべきだった、東山裕の心は冷酷で、血は冷たいということを。

前世の経験から、彼女が全力を尽くして何年も愛し続けても無関心だった男は、絶対に冷たく残酷な心を持っているということを理解すべきだった。

彼女は思い上がっていた、彼の愛が本物だと思い込んで。

そして、男に愛されると必ず心を動かされてしまう自分が情けない。

でも、誰を愛してもよかったのに、彼を愛するべきではなかった!

どんなことがあっても、彼を愛するべきではなかった……

海野桜は今になって、そのことをより深く理解した。でもまだ間に合う、彼女はまだ生きている、ただ心が死んだだけだ。

大したことじゃない……

心がなくても、彼女は生きていける。

ただ、おじいちゃんがいなくなったら、本当に生きていけない。

この悲しみよりも、海野桜はおじいちゃんのことが心配だった。

おじいちゃんに何かあったらと怖かった。もし当時の冤罪が本当に彼によるものだったら、おじいちゃんは刑を言い渡されるだろう……

海野桜は誰よりも、死刑判決が何を意味するのかを理解していた。

今、彼女は切実におじいちゃんに会って、すべてを明らかにしたいと思っていた。

しかし当時の事件は機密事項で、浜田統介が連行されて調査されることも機密だった。