第288章 おじいさんに会いに連れて行く

海野桜は彼の手を振り払い、一言も言いたくなく、すぐにその場から離れようとした。

「爺さんに会わせてあげられる!」東山裕が突然言った。

海野桜は足を止め、振り返った。「何て言った?」

「爺さんに会わせてあげられる」彼は低い声で繰り返した。

「爺さんはどこにいるの?今どうしてるの?」海野桜は焦って尋ねた。

東山裕は質問に直接答えず、「知りたければ、車に乗って。連れて行ってあげる」と言った。

「結構よ!」海野桜は考えもせずに断った。「爺さんがどこにいるか教えて。私一人で行くわ」

「私が連れて行かなければ、会えないよ」そう言うと、東山裕は車のドアを開け、彼女が乗るのを待った。

海野桜は彼と一緒にいたくなかったが、爺さんに会いたい気持ちが強く、仕方なく妥協して近づいた。

しかし、彼女の態度はとても冷たく、道中ずっと彼と言葉を交わさなかった。

いや、彼女の態度は他人行儀と言えるほどで、まるで彼を完全な他人として扱っているようだった。

東山裕は胸が締め付けられるような苦しさを感じ、車の速度もゆっくりとしていた。

この道が永遠に続けばいいのに……と願った。

しかし、どんなにゆっくり走っても、車は目的地に着いてしまった。

彼らが来たのは、福岡市のほとんど知られていない刑務所で、ここには政治犯がほとんどだった。

海野桜は車を降り、周りを見渡すと、胸が痛くなった。

爺さんはここに収容されているの?

「ついて来て」東山裕が声をかけ、先に歩き出した。海野桜は重い足取りで彼の後を追った。

そして、彼の案内で、海野桜はついに爺さんに会えることになった。

警察は面会室で二人を会わせることにした。海野桜が入室すると、浜田統介はすでに中に座っていた。

彼の髪は白くなり、灰色の作業着を着ていたが、彼女を見る目は相変わらず慈愛に満ちていた。

「爺さん——」海野桜は駆け寄り、彼の体をきつく抱きしめた。

涙が止めどなく流れ、まるで数え切れないほどの辛い思いをした子供のように泣いた。

浜田統介は目に涙を浮かべながら、笑顔で彼女の頭を撫でた。「もういいよ、泣かないで。爺さんは大丈夫だから、心配しないで」

海野桜は突然彼から離れ、地面に膝をついた。「爺さん、ごめんなさい。私のせいで爺さんがこんなことに…申し訳ありません!」