海野桜も自分の答えを言いたくなく、淡々と尋ねた。「本当に周りから見放されるのが怖くないの?」
聞いた瞬間後悔した。
この質問に何の意味があるのか。彼は既に手放さないと言ったのだから。そして彼が望むなら、彼女も後悔しないだろう。
東山裕は彼女を一瞥し、口角を上げた。「どうした?心配なのか?」
海野桜は言葉を失い、「そんなことあり得ると思う?」
「なぜあり得ないんだ?」東山裕は声を暗くして言った。「君がこれを気にしているのは分かっている」
海野桜が反論しようとした時、彼の言葉が続いた。
「もちろん、私のことを気にかけているわけじゃない。ただ私に多くを借りたくないだけだ」
「……」海野桜は言葉を失った。確かに彼女は東山裕が周りから見放されることを気にしていた。
彼女と彼の取引は、お互いの意思の下で行われたものだった。
もし彼が困っているなら、彼女は無理強いしないつもりだった……
東山裕は更に彼女を慰めた。「安心して、誰も私を脅かすことはできない。実は彼らが怖がっているのは、私が彼らを見放すことだ」
彼らが彼から離れることを彼が恐れているわけではない……
海野桜は少し驚いた。
そうだ、彼は東山裕、アジアを制覇した金融界の巨頭なのだ。
彼は既に世界の頂点に立っている。誰が彼を脅かすことができ、誰が本当に彼に見放されたいと思うだろうか。
実力が全てを決めるこの世界で、彼がルールなのだ。
しかし、彼の両親は確実に彼を恐れることはないだろう。
でも彼女も利己的だった。彼が彼女と取引をしたいなら、彼女から断ることはしない。
彼女はただ祖父に元気で生きていてほしかった……
結局のところ、彼らは両方とも利己的で、お互いの必要なものを得ているだけだった。
海野桜は、自分と東山裕がここまで来るとは思ってもみなかった。
ずっと、彼女は彼らが一緒になるか、二度と関わらないかのどちらかだと思っていた。しかし、取引のために一緒になるという結果は予想外だった。
実際、このような関係は最も不自然で、問題が起きやすい。
でも彼らには他に方法がなかった……
海野桜は窓の外を見つめて考え込んでいたが、しばらくして、これが帰り道ではないことに気付いた。
東山裕はどんどん道を外れ、海辺まで来ていた!
「どこに行くの?」海野桜は不思議そうに尋ねた。