第334章 後悔はしない!

東山裕は車を猛スピードで走らせていた。

彼はハンドルをしっかりと握り締め、全身から冷たい雰囲気を漂わせていた。

海野桜は静かに身動きひとつせず、落ち着いた様子で、彼の心の中の荒波とは対照的だった。

しかし、彼女が無関心であればあるほど、東山裕の怒りは増していった!

ほとんど理性を失いかけた男は、突然アクセルを踏み込み、車は前方の車に向かって最高速度で突っ込んでいった!

「あっ——」

車が衝突しそうになった瞬間、海野桜が驚いて叫び声を上げたその時、東山裕は瞬時にハンドルを切り、危うく避けた。

海野桜は心臓が止まりそうになり、少し呆れた様子で彼を見た。

東山裕は顎を引き締め、横顔は深く硬く、目つきも冷たかった。

海野桜は呆れながら尋ねた。「何を怒っているのか分からないけど、このままでいいじゃない?」

「……」東山裕の目が一瞬揺らいだが、何の反応も示さなかった。

海野桜は窓の外を見ながら、独り言のように言った。「東山裕、実はこの結果が一番いいの。こうでなければ、私は心から進んであなたと結婚できないわ。」

いや、彼の望んでいた結果はこんなものではなかった!

彼は彼女が心から進んで結婚してくれることを望んでいたが、愛も憎しみもない抜け殻のような存在は望んでいなかった!

しかし、海野桜の言う通り、これが最善の結果なのだ。

彼女は苦しまなくて済む。もし彼が彼女の愛情の有無を気にしなければ、彼も苦しまなくて済む。

だが皮肉なことに、彼はとても気にしていた……

彼は彼女に感情を持ってほしかった。たとえ憎しみでもよかった。

でも彼女は憎むこともできない。それは彼女を苦しめることになるから。そして彼女は愛することもできない。

だから海野桜にできることは、愛も憎しみもない状態でいることだけ……

実は彼女は間違っていない。間違っているのは欲張りで利己的な彼の方だ。彼女の体を手に入れただけでは足りず、心まで手に入れたがっている。

過去のあれだけの年月、彼女も彼に対してこんな欲張りな思いを抱いていたのだろうか?

東山裕は本当に後悔していた。もっと早く彼女の気持ちに応えて、もっと早く彼女を幸せにすればよかった。彼は彼女を8年近くも苦しめたのに、彼女は彼をたった数ヶ月苦しめただけで、もう耐えられなくなっていた。