でも、どこで見たことがあるのだろう?
海野桜は一生懸命考えていたが、突然めまいがして、体も力が抜けてしまった。
頭を振って意識を保とうとしたが、全く効果がなかった。
なぜ急にこんな状態に?
海野桜は目の前の飲み物のカップを見て、はっと気づいた。薬を盛られたのだ!
「おじいちゃん……」海野桜は不安になりながらテーブルに手をついたが、めまいには勝てず、突然意識を失ってしまった。
完全に意識を失う前、おじいさんの声が聞こえた:「桜、おじいちゃんを責めないでくれ。このままじゃ君は行かないだろうから。信子は君のいとこだ。彼女の父親と君のお母さんは兄妹で、彼らがちゃんと君の面倒を見てくれる……」
海野桜は首を振って、行きたくないと言いたかった。
しかし、もう反対する機会すらなかった……
……
窓の外では、いつの間にか細かい雨が降り始めていた。
シルバーグレーのスーツを着た東山裕は、ソファにだらしなく寄りかかり、床までの窓の外を淡々と見つめていた。まるで王子のように気品があり美しかった。
しかし、彼はすでにこの姿勢のままずっと長い時間が経っていた……
朝早くからここで待っていて、今や夜が迫っているのに、待っている人はまだ来ない。
でも、彼にはまだ待ち続ける時間があった。
深夜12時まで、まだ数時間ある。
しかし、その数時間は長く感じられながらも、あっという間に過ぎ去った。
福岡市のあちこちでネオンが輝き、黒い空は重苦しく息苦しかった。
真夜中の鐘が静かに鳴り響き、東山裕の心も、この瞬間に死刑を宣告された。
「東山様、もう12時です」支配人が慎重に声をかけた。
東山裕はゆっくりと目を上げ、突然床までの窓に映る自分の姿を見た。
鏡に映る彼の深い目鼻立ちには、柔らかい線一つない。
漆黒の瞳は、まるで恐ろしいブラックホールのように、一筋の光も宿していなかった!
おそらく、永遠に光が戻ることはないだろう……
****************
海野桜は去った。誰も彼女がどこへ行ったのか知らない。
東山裕も姿を消した。誰も彼がどこへ行ったのか知らない。
しかし東山グループは依然として運営されており、現在指揮を執っているのは、彼の父親である東山秀造だ。