しかし、これからのことを考えると、また悲しくなってきた。
「桜ちゃん、はい、これをあげよう」浜田統介は銀行カードを取り出して彼女に渡した。
海野桜は不思議そうに「おじいちゃん、これは何のために?」と尋ねた。
老人は説明した。「今日で20歳になったね。おじいちゃんの目には、もう大人に見えるよ。そろそろ自立した生活を送る時期だ。これは、おじいちゃんがこの何年間かで貯めたお小遣いだ。ゆっくり使いなさい」
海野桜は嬉しそうに銀行カードを手に取り、わざと「おじいちゃん、中にいくら入ってるの?」と聞いた。
「そう多くはないよ、5000万円だけだ」
海野桜は驚いて「いくらですって?!」
老人は笑って「どうした?少なすぎると思うのか?」
「違います!」海野桜は慌てて首を振った。「おじいちゃん、どうしてこんなにたくさんのお金をくれるの?なぜ急にこんなに?」
彼女は数百万円程度だと思っていた。
まさかこんなにあるとは!
しかし浜田統介は「これは多くないよ。これはおじいちゃんが桜に残す財産で、一生使うものだから、本当に多くはないんだ」と言った。
「おじいちゃん、どうして急にこれをくれるの?」海野桜はカードを返そうとした。「要りません。おじいちゃんに財産を残してもらう必要はありません。これからは自分で稼ぎます。おじいちゃんに孝行したいんです。お金なんていりません」
「これは必ず持っていなさい。外出するのに、お金がなければどうするんだ」何かを思い出したように、浜田統介は悲しげな表情を浮かべた。「これからはおじいちゃんが側にいて面倒を見てあげられないから、自分のことは自分でしっかり面倒を見るんだよ、わかったかい?」
海野桜は愕然として、急に不吉な予感がした。
「おじいちゃん、何を言ってるの?どうして側にいられないの?どこかに行くの?!」
「おじいちゃんがどこかに行くんじゃない。桜がおじいちゃんから離れなければならないんだ」
海野桜は目を見開いた。「どうして?!まさか、東山裕と結婚することになったから……」
「桜、彼とは結婚してはいけない!」老人は厳しい表情で彼女の言葉を遮った。「あの男とは釣り合わない。二人が一緒になっても幸せにはなれない。おじいちゃんは、お前がこの道を選んで人生を台無しにするのを黙って見ているわけにはいかないんだ」