第329章 寄り添う影

そう言うと彼は立ち上がり、素早くガウンを引っ張って体に巻き付け、直接バスルームへ向かった!

海野桜は愕然として、しばらく我に返れなかった。

彼は彼女の宿題がまだ終わっていないからと、我慢したの?

しかも彼が相当苦しんで我慢しているのが分かった。

最後の瞬間に、どれほどの意志力を使って自制できたのだろう?

海野桜は東山裕が本当に彼女の宿題が終わっていないから我慢したとは信じていなかった。

なぜ止まったのかはよく分からないが、追及するつもりもなかった。

ただ...心の中の感情が少し複雑だった...

しかし海野桜は深く考えず、立ち上がって書斎へ向かった。

東山裕は浴室で長い時間を過ごしてから出てきたが、寝室は空っぽで、彼の心も空っぽのようだった。

彼は分かっていた。男として、最後の瞬間に止めるべきではなかったと。

しかし海野桜が望んでいなかった...

彼女が何でもないような顔をしていても、彼は彼女の心の奥底にある悲しみを感じ取ることができた。

その悲しみが彼の心を刺し、これ以上続けることができなくなった。

彼は既に彼女を深く傷つけていた。これ以上の苦しみを与えたくなかった。

だから我慢したのだ...

彼女の苦しみを和らげるために、彼女が心から望む日まで我慢するつもりだった。

しかし、そんな日が来るのだろうかと疑問に思っていた。

でも、来ようが来まいが、待ち続けるつもりだった。これが彼にできる最大限の愛情表現だった。

東山裕は一本のタバコを吸い終えてから、海野桜の書斎へ向かった。

書斎のドアを開けると、彼女が机の前に座って、真剣に宿題に取り組んでいるのが見えた。

先ほどの出来事は、彼女の気持ちに影響を与えていないようだった。

東山裕は安堵しながらも溜息をついた。実は彼は、彼女が気にしたり怒ったりしてくれることを望んでいた。少なくともそれは彼女の心の中に自分がいる証だから。

彼女がこんなに平静で、宿題に集中できることは、本当に打撃だった。

しかし彼女がこれほど理性的で冷静なことに、彼は少し安心もしていた。なぜなら、このような彼女だからこそ、挫けることなく、より積極的で前向きでいられるから...