第345章 まるで彼女を知らないかのように

海野桜は家に帰ったばかりで、休む暇もなく、すぐに東山裕の会社へ彼を探しに行った。

しかし、予約をしていなかったため、受付の女性は彼女を中に入れることも、東山裕に連絡を取ることもしてくれなかった。

しかも受付の女性が変わっていて、彼女のことを知らなかったので、なおさら通してもらえなかった。

海野桜は仕方なく会社の入り口で彼を待つことにした。どうせもうすぐ退社時間だったから。

同時に、彼への電話をかけ続けることも諦めなかった。

しかし残念ながら、東山裕の携帯電話は常に電源が切られていて、どうしても繋がらなかった。

海野桜は実は予想していた。彼は新しい番号に変えたのかもしれないと。彼のような大物は、携帯電話の電源を切ることなどありえないはずだった。

今日ずっと電源が切られているということは、以前の番号をもう使うつもりがないということしか考えられなかった。