しかし、多くの説明はしなかった。今はまだ、どのように全てを説明すればいいのか分からなかったから。
幸い、橋本友香は物分かりがよく、何も聞かなかった。
海野桜は番号を手に入れると、すぐに柴田治人に電話をかけた。
その時、柴田治人はパーティーに参加していた。海野桜からの電話を受けて、彼は意外そうに眉を上げた。「浜田さん、何かご用でしょうか?」
以前は、海野桜が東山裕と離婚した後でも、柴田治人は彼女のことを義姉さんと呼んでいた。
今は直接浜田さんと呼ぶということは、柴田治人が彼女を快く思っていないということだ。
柴田治人の態度は、即ち東山裕の態度でもあった。
なぜなら、柴田治人が彼女に対して礼儀正しくしていたのは、全て東山裕のためだったから。
今、彼がこのように彼女を呼ぶということは、東山裕がもう彼女を重要視していないことを柴田治人がよく分かっているということを示している。