海野桜は彼を見て、試すように尋ねた。「あの日、おじいちゃんに会った時、本当に何も話さなかったの?」
「何も!」東山裕は即座に答えた。
海野桜はそれ以上何も聞かなかった。彼が何もないと言うなら、本当に何もなかったのだろう。
もしかしたら、おじいちゃんは誘拐されたのかもしれない。犯人は恐らく鈴木健雄の義兄弟、あの佐藤勇の子孫だろう。
おじいちゃんは佐藤勇の末っ子を捕まえたから、他にも子孫がいて、おじいちゃんに復讐しに来たのかもしれない。
海野桜が自分の考えを話すと、東山裕は頷いた。「その可能性は考えられる。排除はできない。」
海野桜はさらに不安になった。「もし本当に彼らがやったなら、きっとおじいちゃんに危害を加えるわ!」
「でも、老人は明らかに意図的に家出したんだ。」東山裕は続けた。「だから必ずしも何かあったわけじゃない。」