第365章 私と一緒に帰るんだ

「自分でタクシーで帰ります」海野桜はすぐにドアを開けようとした。

「話があるんだ!」東山裕は低い声で言った。

海野桜は不思議そうに、横を向いて彼を見た。「何の話?」

男は彼女を一瞥しただけで、車を発進させた。「帰ってから話す。はっきりさせておくべきことがある」

海野桜はますます不思議に思った。彼は何を話そうとしているのだろう?

東山裕がそう言うからには、海野桜も彼について行くしかなかった。

しかし、二人とも黙ったままで、車内の雰囲気はずっと硬かった。

昨夜、海野桜は連れ去られた後、ずっと休めていなかった。うとうとし始めた時、東山裕の声が突然聞こえてきた。それは、かすかな声だった。

「何かされなかったか?」

海野桜は我に返り、少し考えてから、今の声が幻覚ではなく、確かに彼の声だったと確信した。