第369章 おとなしく私の側にいて

彼女は突然東山裕の腕を掴み、彼を見つめながら問い詰めた。「あなたが言ったことは全部本当だと誓って！私を騙してないわよね？！」

東山裕は力強く答えた。「本当だ！こんなことで嘘はつかない。本当は言いたくなかったが、ここまで来たら、君の協力が必要なんだ」

「協力？私に何をしてほしいの？」海野桜は不思議そうに尋ねた。

「大人しく私の側にいて！私の妻になって！」東山裕はそう答えた。

海野桜は一瞬固まり、心臓が理由もなく...一拍遅れた。

しかし、東山裕の次の言葉を聞いて、彼女の心に芽生えたかすかな胸の高鳴りは、瞬く間に消え去った。

「君が私の妻であれば、彼らは事を大きくする勇気はなくなり、君に手を出すこともないだろう。君が無事なら、おじいさんも無事だ、わかるか？」

海野桜の目が揺れた。「つまり、おじいさんが戻ってくるまで、私はあなたに協力しなければならないの？」

「そうだ」

「...わかったわ、協力するわ！」海野桜は固く頷いた。

彼女は協力しなければならない。全ておじいさんを救うためだから。

「でも、どうしてそこまで私たちを助けてくれるの？」海野桜は心の疑問を口にした。

結局のところ、おじいさんは今、ある大物に目をつけられている。東山裕にも手に負えないような相手のようだ。そうであれば、彼は身を引くべきはずだ。

東山裕は当然のように答えた。「これはおじいさんへの借りだ。私は彼に申し訳ないことをした。当然償わなければならない！」

だから今、彼らは一緒にいる。全ておじいさんのために。

おじいさんのために、彼女は東山裕が離婚していないことを隠していたことを気にしないことにした。

おじいさんのために、他人同然になっていた二人は、再び夫婦関係を続けることになった。

しかも誰も異議を唱えなかった。海野桜はもう離れようとは思わず、彼も彼女を引き止める方法を必死に考える必要もなくなった。

東山裕は何故か、突然天が彼にこのような機会を与えてくれたことを喜ばしく思った。

おじいさんが今危険な状況にあるにもかかわらず、彼は思わず喜びを感じてしまう...

東山裕は思考を切り替え、さらに言った。「今日から、ここに住んでくれ。私はおじいさんを助ける方法を考えているところだ。その時には君の助けが必要かもしれない」