リビングに立って、海野桜は家の中のすべてを見渡し、どこもかしこも懐かしく感じた。
人は本当に失うまで、物事の大切さが分からないものだ。
今になって初めて、彼女はこの家をどれほど愛していたのかを知った。
ここにある花や草、一つ一つのものを愛していた。
そしてここでの思い出も大切にしていた……
もしここがなくなってしまったら、彼女の世界も不完全なものになってしまうような気がした。
海野桜はこの古い屋敷が残ることを、そして祖父もきっとそう願っていただろうことを、どれほど望んでいたことか。
……
東山裕が去った後、海野桜との連絡は途絶えていた。
しかし夕食時、海野桜は張本家政婦と一緒に豪華な夕食を用意した。
なぜか、東山裕がここに食事に来る予感がしていた。
二人が料理を並べ終えたところで、案の定、東山裕が戻ってきた。