相良剛は何となく照れくさそうに笑って、「その通りだよ!」
海野桜はまた笑って、「相良兄、どうしてそんな風に考えるの?私を連れ去った人はあなたじゃないんだから、全然罪悪感を感じる必要なんてないのよ」
相良剛は再び表情を引き締めて、「でも俺はお前の兄貴なんだ、お前を守るべきだった!なのに、それができなかった!それに、軍人としても、お前を守るべきだったんだ!」
「相良兄、あの時の状況は一番よく分かっているでしょう。私を守りたくても無理だったはずよ。だからそれは相良兄の責任じゃなくて、全部悪い人たちのせいなの!私も一度も相良兄を責めたことはないわ。だから自分を責めないで、本当に何も悪くないんだから」
相良剛は暗い表情で首を振った。「桜、お前は俺に非がないと思っているかもしれないが、俺には分かっているんだ。俺は間違いを犯した。そして、チャンスも逃してしまった」
海野桜は困惑して、彼の言葉の意味が理解できなかった。
「チャンス?」
相良剛は深い眼差しで彼女を見つめ、低い声で言った。「ああ、お前を逃してしまった。何度もお前を逃してしまった。今回だって、お前を救うために命を懸けることができたはずなのに、全てを逃してしまった」
海野桜は凍りついた。「……」
相良剛は自嘲的に笑った。「以前は、東山裕はお前を十分に愛していないと言っていた。でも今回、彼が本当にお前を愛していることが分かった」
「……」
「彼はお前のために全てを捨てる覚悟があった。でも俺は……たった一つの命令で、お前を救うことを諦めてしまった!」ここまで話して、相良剛の気持ちは急に重くなった。「桜、分かるか?これが俺の人生で最も後悔していることなんだ!」
「相良兄……」海野桜が慰めようとした時、外からブーンという音が聞こえてきた。
彼女が不思議に思っていると、庭に出ていた張本家政婦が走って入ってきた。
「お嬢様、大変です!外にたくさんの人が来ています。重機も来ていて、私たちの家に向かってきています!」
海野桜はさっと立ち上がり、不吉な予感とともに外へ向かった。
相良剛も不思議そうに付いていった。
海野桜が大門を開けると、確かに作業員の一団が彼らの家の前に来ていた。
作業員の後ろには数台のショベルカーが控えていた。
そして一台の黒い乗用車も……