張本家政婦は片手で荷物を持ち、もう片方の手で彼女を引っ張りながら、階段を上がっていった。
そうして海野桜は、この古い屋敷に住むことになった。
やはり自分の家が一番いい。誰も彼女をいじめることはないし、辛くなっても離れることを考える必要もない。
ここは彼女の永遠の家なのだから。
でも、この家も伯父さんに売られてしまった。
海野桜はそのことを思い出すと、また悲しくなった。そして突然、おじいちゃんが恋しくなった。おじいちゃんがいてくれたらいいのに。
考えているうちに、ふと東山裕のことを思い出した。
彼のことを考えると、さらに辛くなった。
でも、彼らは別れたということになるのだろう。彼女がここに戻って来てから2日経つのに、彼は一度も連絡してこなかった。
本当に彼女を諦めて、もう気にかけないつもりなのだろう。