第389章 私はあなたを守れなかった

張本家政婦は片手で荷物を持ち、もう片方の手で彼女を引っ張りながら、階段を上がっていった。

そうして海野桜は、この古い屋敷に住むことになった。

やはり自分の家が一番いい。誰も彼女をいじめることはないし、辛くなっても離れることを考える必要もない。

ここは彼女の永遠の家なのだから。

でも、この家も伯父さんに売られてしまった。

海野桜はそのことを思い出すと、また悲しくなった。そして突然、おじいちゃんが恋しくなった。おじいちゃんがいてくれたらいいのに。

考えているうちに、ふと東山裕のことを思い出した。

彼のことを考えると、さらに辛くなった。

でも、彼らは別れたということになるのだろう。彼女がここに戻って来てから2日経つのに、彼は一度も連絡してこなかった。

本当に彼女を諦めて、もう気にかけないつもりなのだろう。

海野桜は時々思う。東山裕との関係にこんなに疲れているのだから、お互いに諦めた方がいいのかもしれない。

でも時々、なぜか名残惜しく感じる……

本当に、また彼のことを好きになってしまったのだろうか?

海野桜にはまだ信じられない気持ちだった。どうしてこんなことになったのだろう?

前世で死をもって誓った、二度と愛さないはずの男性を、今世でまた好きになってしまうなんて。

海野桜、しっかりしなさい!

海野桜が枕で頭を叩いているとき、突然ドアの外から張本家政婦の声が聞こえてきた。「お嬢様、早く出てきてください!誰が来たか見てください!」

海野桜の心臓が激しく乱れた。

東山裕?

「お嬢様、相良様がいらっしゃいました!」張本家政婦は嬉しそうに言った。

海野桜は少し驚いた。相良剛?どうして来たのだろう?

前回、海野桜が誘拐された後、相良剛は彼女にメッセージを送り、彼女の様子を尋ねた。

彼女は返信したが、彼からの返信はなかった。

海野桜は、もう彼から積極的に連絡は来ないだろうと思っていた。だから彼が来たと聞いて、意外に思った。

海野桜はすぐに階下に降りて行き、応接間に座っている相良剛を見た。

彼はカジュアルな服装をしていたが、なぜか海野桜には彼の雰囲気が少し暗く感じられた。

相良剛は彼女の足音を聞くと、すぐに彼女の方を向いた。

「相良兄、どうしてここに?」海野桜はすぐに笑顔で尋ね、彼の横に座った。