第396章 東山裕の帰りを待つ

「社長は庄野グループが買収しようとしていた物件の30パーセントを密かに買い取り、周辺の土地も手に入れたんです。

庄野グループが不動産開発を円滑に進めるためには、まず社長が持っている物件と土地を買い取らなければなりません。

そうしなければ、工事を進めることができないんです。

だから今の庄野グループは、社長とよく交渉しないと、開発権が無駄になってしまいます。」

海野桜は驚愕した——

東山裕がこんなことをしていたなんて、思いもよらなかった。

浜田家の古い屋敷が取り壊されるのを阻止するために、彼はこれほどの物件と土地を買い取ったのだ!

そうすることでしか、庄野グループと交渉する資格を得られなかったのだ。

彼はここまでやってのけたのだ!

海野桜は東山ビルをどうやって出たのか覚えていなかった。

車に乗り込むと、思わず携帯を取り出し、東山裕に電話をかけた。今この瞬間、彼に何かを伝えたかった。

【申し訳ございません。お客様のおかけになった電話は電源が切れています……】

しかし、電話からは機械的な女性の声が流れてきた。

海野桜は落胆して携帯をしまった。東山裕が今、飛行機の中にいることを忘れていた。

しかし、海野桜はもう彼に電話をかけることはなかった。

何を言えばいいのかわからなくなってしまったし、彼の姿が見えない状態では、言いたいことも口に出せなかった。

……

1時間後、飛行機は横浜市に到着した。

東山裕は携帯の電源を入れると、海野桜からの不在着信が1件あることに気づいた。彼の目が一瞬揺らいだが、彼女に返信したい衝動を抑えた。

彼は必ず、海野桜への感情を抑制しなければならなかった!

さもなければ、本当に彼女を壊してしまうかもしれない!

海野桜は東山裕の考えを知らず、家で彼の帰りを待っていた。

一週間という時間が、突然彼女にとってあまりにも長く感じられた!

海野桜は人を呼んで塀を修理し、張本家政婦と一緒に庭の手入れもした。

橋本友香と食事をし、本も2冊読んだ。

でも時間はまだ過ぎない……

海野桜はイライラしながら3冊目の本を脇に投げ、残り時間を計算した。

あと1日で東山裕が帰ってくる。

でも、なぜこの残りの1日がこんなにも耐え難いのだろう?