第393章 俺の女にしかなれない

そして海野桜は、彼を呼び止めることができなかった。

ただ車が遠ざかっていく影を見つめながら、彼女は長い間我に返れなかった……

当然、彼女のその反応を相良剛は見逃さなかった。

彼は目を沈ませ、重々しく言った。「桜、私も行かなければならない。何かあったら電話してくれ。一人で抱え込まないで。」

海野桜は我に返り、やっと思い出したように尋ねた。「相良兄、さっき大丈夫でしたか?怪我はありませんでしたか?」

相良剛は背中の痛みをこらえながら、淡々と笑って答えた。「私は大丈夫だ、心配しないで。君は?怪我はない?」

海野桜は首を振った。「私も大丈夫です。」

「大丈夫なら良かった……じゃあ、行くよ。」相良剛はそう言うと、きっぱりと背を向けて去っていった。

もう彼にも、そこに留まることはできなかったから……

そして海野桜が引き止めたかった人物は、彼ではなかったのだろう。

相良剛は暗い気持ちを抱えて去り、先に立ち去った東山裕も同じように暗い気分だった。

それも嵐が来る前よりも恐ろしいほどの暗さだった。

車内の運転手は、細心の注意を払って運転し、息をするのも恐れるほどだった。

助手席の大柄で凶悪そうなボディーガードまでも、なぜか緊張していた。

突然、東山裕が低い声で言った。「止まれ!」

運転手は慌てて車を止め、後続の車列も緩やかに停止した。

東山裕はすぐにドアを開けて降りた。というのも、バックミラーに相良剛の車が映っているのを見たからだ。

相良剛も前方で待つ彼を見つけた……

車は東山裕の前で停止し、相良剛は車から出て、彼と向かい合って立った。

二人とも背が高く、威圧的な雰囲気を持っていたが、その風格は全く異なっていた。

一人はビジネス界の帝王、もう一人は戦場を駆け抜けた将軍。

彼らの出会いは、いつも激しい対決のようだった。

「用件は?」相良剛は冷ややかに問い返した。

東山裕は冷たい笑みを浮かべた。「君は海野桜に未練があるようだな。だが残念だが、この先も君には機会などないぞ!」

相良剛は冷笑した。「君は彼女を愛していないと言ったじゃないか。なぜ私に機会がないと分かる?」