第445章 彼が恋しい

しかし彼女がどれほど保証しても、東山裕は安心できなかった。

彼は出発する前に、特別にすべてを手配していた。

さらには家庭医も連絡を取り、いつでも待機させていた。海野桜に何か異変があった場合に備えてのことだった。

彼はまた使用人たちにも様々な指示を出し、海野桜をしっかり世話するよう、彼女に何もさせないよう、どこへ行くにも必ず誰かが付き添うようにと言い渡した。

皆が勅命を受けたかのように彼の指示を真剣に受け止めていた。

しかし東山裕はそれでも安心できず、まだ去りがたい気持ちでいた!

張本家政婦はもう我慢できなくなり、笑いながら言った。「旦那様、どうぞ安心してお出かけください。妊婦はあなたが思うほど脆弱ではありませんよ。それに私がいますから、お嬢様は大丈夫です。私がしっかりお嬢様の面倒を見ますから!」

海野桜も東山裕がこれほど気にかけ、注意深くなるとは思っていなかった。彼女も恥ずかしくなってきた。「東山裕、私は元気だから、早く行ってよ。そうしないと間に合わなくなるわよ!」

東山裕も自分が神経質すぎると感じていた。

でも仕方がない。海野桜の妊娠はとても大事なことで、慎重にならざるを得なかった。

しかし、確かにもう時間を無駄にはできなかった。

腕時計を見て、東山裕は海野桜の頭を撫でた。「じゃあ行くよ、自分をしっかり大事にしてね!」

「うん、あなたも自分を大事にしてね!」海野桜は彼の体を軽く押した。「早く車に乗って、遅れないようにして。」

東山裕はうなずいた。「わかった、じゃあ行くよ。」

「うん!」海野桜が手を振ると、車に乗り込んだばかりの男が突然また出てきて、彼女の体を引き寄せ、激しく唇を奪った!

海野桜は少し驚き、周りの人たちも恥ずかしそうに視線をそらした。

しかし東山裕はお構いなしに深いキスをし、それから名残惜しそうに彼女を放し、海野桜だけが聞こえる声で低く言った。「俺がいない間に何かあったら、電話してくれ。あの専用の番号に!」

そう言うと、海野桜が反応する間もなく、彼は車に乗り込み、ドアを閉めた!

「行こう!」東山裕はすぐに運転手に命じた。これ以上留まらないようにするためだった。さもなければ本当に去る気持ちがなくなってしまうだろう。

運転手はすぐに車を発進させた……