第486章 私はあなたを手に入れたいのだ

主に彼女が怖がっても無駄だったからだ。

彼女が目を覚ました時には、すでに飛行機に乗っていて、フランスへ向かう途中だったのだから。

だから来たからには受け入れるしかなく、彼女にできることは東山裕が彼女を救いに来るのを待つことだけだった。

東山輝昭は彼女がまだ窓の外の白い雲を眺める余裕があるのを見て、眉を上げて笑いながら言った。「怖くなさそうだね?僕があなたを連れ去って、売り飛ばして、一生家に帰れなくしても怖くないの?」

海野桜は彼を見て、淡々と尋ねた。「あなたはそんなにお金に困っているの?私はそんなに価値のある人間じゃないわ」

東山輝昭は笑い出した。「君は価値がないかもしれないが、東山裕にとっては非常に価値がある。君は彼の宝物だ。もし君がいなくなったら、彼はきっと死んでしまうだろうね?」

「彼は私をずっと探し続けるわ。私を見つけられなければ、彼は死なないわ!」海野桜は確信を持って言った。

東山輝昭は彼女がそう答えるとは思っていなかった。興味深そうに口元を歪めて「つまり、私が君を殺せば、彼は死ぬということか?」

「彼が死んだらつまらないでしょう。あなたは人を苦しめる楽しみがなくなるじゃない?」海野桜はまた反論した。

東山輝昭は一瞬驚き、その後大笑いした。

しかし、どれだけ笑っても、彼の目は冷たいままだった。

彼は東山裕とよく似ていて、二人とも非常に危険な人物だった。

しかし海野桜は気づいた。東山輝昭と比べると、東山裕から受ける印象はあまりにも温かかった。

そして東山輝昭は笑うのが好きそうに見えるが、実際は骨の髄まで情け容赦のない人間だった。

海野桜は思った。東山裕が彼から離れるように言ったのも無理はない。

人を誘拐することさえする彼は、道徳的な底線を持たない人間だった。

東山輝昭は笑い終えると、また尋ねた。「どうして私が東山裕を苦しめたいと思っていることを知っているんだ?実は私は君を手に入れたいだけなんだ。知っているか?最初から君に目をつけていたんだよ!」

海野桜は冷ややかに鼻を鳴らした。「私が東山裕の妻でなければ、あなたは私を見向きもしないでしょう!」