第485章 海野桜が消えた

海野桜は少し困った様子で言った。「10分では足りないかもしれないけど…」

「じゃあ、中に入って探すよ!」東山裕はまばたきもせずに言った。

海野桜:「……」

彼女はやはり10分以内に急いで出てきた方がいいだろう。東山裕が中に入ってきたら、我慢するしかない!

海野桜は急いでトイレに行き、東山裕はオフィスデスクに座って、カウントダウンを始めた。

実は彼もこんなに用心深くしたくはなかった。

今日はどうしたことか、少し落ち着かない気分だった。

おそらくここ数日の緊張が、今になって疲労反応として現れているのだろう。

東山裕がそう考えていると、突然めまいを感じた。

次の瞬間、脳に鋭い痛みが走った——

目の前が一瞬真っ暗になった。

東山裕は深呼吸をして、こめかみをさすると、頭がだんだんはっきりしてきた。

しかし机の上の時計を見ると、なんと15分も経っていた!

海野桜がトイレに行ってから今まで、すでに10分を超えていた!

東山裕は急に立ち上がり、休憩室のトイレに駆け込んだ。

トイレのドアは内側から鍵がかかっていた。東山裕は強くノックして、低い声で叫んだ。「海野桜——」

中からは何の反応もなかった。

東山裕の心は沈んだ。彼は一歩下がり、思い切り足でドアを蹴り開けた!

「バン!」ドアが壁にぶつかり、大きな音を立てたが、中は空っぽで、誰もいなかった。

海野桜がいない……

中に海野桜はおらず、海野桜が消えた!

東山裕は瞬時に慌てふためいた……

海野桜は東山輝昭の手下によって、トイレの天井にある換気口から連れ去られていた。

彼らはずっとそこに潜んでおり、海野桜を捕まえるチャンスを待っていたのだ。

海野桜を気絶させた後、彼らは彼女を屋上に連れて行き、ヘリコプターで逃げた。

東山裕が気づいた時には、ヘリコプターはすでに飛び去っていた。東山裕がすぐに警察に通報して捜索しても、もう手遅れだった。

東山輝昭は経路を綿密に研究し、計画は周到で、誰にも気づかれずに海野桜を連れ去った。

しかも非常に慎重だった。

ここ数日、海野桜の身体には常に追跡装置が付けられていた。万が一のことがあった時に、東山裕が彼女を見つけられるようにするためだ。

しかし、東山輝昭は海野桜を捕まえるとすぐに、彼女の身体から追跡装置を取り除いてしまった!