第488章 だからこそ君が好きなんだ

「復讐のためでもあるんだ!」

海野桜は驚いた。

彼女は呆然と尋ね返した。「復讐のため?あなたの言う意味は...」

「そう、彼らに復讐するためだ!」東山輝昭はうなずき、まるで他人の話をしているかのようだった。「敵は強すぎた。この方法しか、彼らと対抗する力を得る手段がなかったんだ。いや、今日まで生き延びるためには、私も絶えず強くならなければならなかった。だから言ったんだ、これはすべて命を懸けて手に入れたものだと」

海野桜は長い間言葉を失っていた。

東山輝昭は笑みを浮かべた。「私の過去に同情してるのか?」

海野桜は我に返り、うなずいた。「ええ、とても同情します」

「それに比べて、東山裕は恵まれすぎてるだろう?」

確かに、二人の世界は、一方は天上、もう一方は地下のようだった。

東山裕は生まれた時から、名家の跡取りだった。

これまでの人生で、彼は不満を感じたことがなかった...

東山輝昭は彼と比べると、確かにとても惨めな人生を送ってきた。

「でもそれは東山裕のせいじゃない!」海野桜は断固として東山裕を守った。「恨むなら母親を恨むべきでしょ!彼女はすべての恨みをあなたに向けるべきじゃなかった。結局は彼女が悪いのよ。私なら、絶対に自分の子供にそんなことしない!」

東山輝昭は眉を上げた。「もし君が東山裕を愛していても、彼が他の女を愛していたらどうだ?その女のために君と君の子供を追い出し、二度と会いたくないと言われても、恨まないのか?」

「恨むわ!」海野桜はためらわずに答えた。「でも条件付きよ」

彼女が「恨む」と言ったとき、東山輝昭は少し驚いた。

彼は海野桜のような女の子は、優しく「恨まない」と言うと思っていた。

まさか彼女がこんなにはっきりと「恨む」と言うとは。

東山輝昭は興味深そうに尋ねた。「どんな条件だ?」

「まず彼が私を裏切ったら、恨むわ。でも最初から私が悪いなら、恨む理由はないでしょ。それに、たとえ恨んでも、私は子供にこんなことしない。復讐の道具にするなんて!」最後の言葉を、海野桜は特に力強く言った。

東山輝昭は目を暗くした。「きれいごとを言って?」

「事実を言ってるの!私は死んでも自分の子供を苦しめたりしない!」海野桜は真剣に強調した。

東山輝昭の瞳の色が一瞬揺らぎ、しばらく沈黙した。