第495章 東山裕を裏切ることはできない

海野桜は驚いた。彼がまだ彼女にチャンスを与えるつもりだとは。

でも……彼女はやはり望まない！

「東山輝昭、私をそのまま殺してください。どんなことがあっても、あなたの要求には応じません！」海野桜は断固として言った。

東山輝昭は冷笑した。「お前は東山裕に対して、そこまで貞節なのか？」

「……」海野桜は答えなかった。

東山輝昭は何故か苛立ちを覚えた。「お前はそこまで彼を愛しているのか、彼のどこがいいんだ？！」

海野桜は彼を一瞥し、目を伏せて小さな声で言った。「彼が私に一番優しくしてくれたから……そして……」

前世も今世も、彼は彼女が唯一愛した男性だった。

二つの世での縁は、彼女がどうして忘れられるだろうか、どうして愛さずにいられるだろうか。

しかし今世では、彼らの縁も終わりに近づいているのだろう。

海野桜は突然とても悲しくなった……

死がもたらす恐怖さえも、彼女と東山裕が別れなければならないという恐れには及ばなかった。

今世で彼らの関係が終わることを考えると、海野桜は辛くて一晩中泣いた。

海野桜は一晩中眠れなかった。眠れないだけでなく、この世界を最後にもう一度愛おしむため、東山裕のいるこの世界を愛おしむためでもあった。

しかし彼女はやはり、死ぬ前に彼にもう一度会えることを望んでいた。

でも彼女にはもうチャンスがないことも分かっていた！

翌朝早く、海野桜は連行された。東山輝昭は彼女に目隠しをさせ、その後飛行機に乗せた。

海野桜の手は拘束され、目も覆われていたので、何も見えなかった。

彼女が東山輝昭にどこへ連れて行くのかと尋ねると、東山輝昭はアフリカへ連れて行って売り飛ばすと言った！

彼の口調は低く冷たく、海野桜は彼の言葉を信じざるを得なかった。

その後、東山輝昭はもう一度チャンスを与えると言い、今なら後悔してもまだ間に合うと。

海野桜はそれでも断固として妥協しなかった。

東山輝昭は彼女の顎をつかみ、冷たい息を吐きかけた。「海野桜、東山裕のためだけに、お前は売られるのを選ぶのか、私の要求に応じないとは？！」

海野桜は彼の手を振り払い、冷淡な声で言った。

「東山輝昭、もういい加減にして。どんな脅しをかけても、私はあなたの要求には応じません！私は東山裕を裏切ることはできない、死んでもできません！」