東山裕はそんなに素晴らしいのか?
すべてを持っているだけでなく、揺るぎない愛情まで手に入れている。
なぜすべての幸運が彼の頭上に降り注いだのか……
東山輝昭は暗い気持ちで外に出ると、外で待っていた藤原恭子を見かけた。
藤原恭子は体が弱く、毛皮のコートを羽織り、風の中で何度か咳き込んだ。
東山輝昭は前に出て心配そうに尋ねた。「お母さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ!」藤原恭子は冷たく言い、彼を見ようともせず、責めるような口調で続けた。「今回はあなたが油断したせいで、私が捕まってしまったのよ!」
東山輝昭は説明しようとした。「計画は完璧だったはずです。でも東山裕があなたを見つけるとは思いませんでした。」
「もういいわ、あなたが無能だっただけよ!あなたさえいなければ、私はこんな目に遭わなかったわ!」藤原恭子は容赦なく非難した。
いつもこうだ。何をしても、少しでも彼女の気に障ると、叱責される。
母親がいるとはいえ、実際には母の愛を少しも感じたことがない!
それでも、彼はこの唯一の肉親を大切に思っていた。
東山輝昭は沈んだ声で尋ねた。「今、彼らを殺しますか?」
藤原恭子の目が揺れ、昨日の東山秀造との会話を思い出した。
彼は彼女を説得し、恨みを捨てて、まともな生活を送るよう勧めた。
ふん、彼女は確かに恨みを捨てるだろう、しかし一時的にだけ……
そう考えながら、藤原恭子は淡々と言った。「必要ないわ。これからは福岡市に住むつもりよ。あなたも知っているでしょう、私はもう長くない。死ぬ前に、あなたのお父さんをもっと見ていたいの。」
「わかりました、すべてはお母さんの言う通りに。」実は、彼ももう人を殺したくなかった。
最初は確かに海野桜を殺して東山裕に復讐し、東山一族全体に復讐するつもりだった。
しかし、今回の出来事を経て、彼の決意は揺らいでいた。
なぜかはわからないが、もう人を殺したくなかった……
だからこれでよかった。彼は自分の心に逆らう必要がなかった。
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東山裕は海野桜を抱えて車に乗り、運転手に帰るよう指示した。
海野桜はようやく、東山輝昭が彼女をアフリカに連れて行ったのではなく、福岡市に戻っていたことを知った。
彼女を売り飛ばすなんて話は、すべて嘘だったのだ!