柴田治人の笑顔は一瞬凍りついた。
東山裕は彼の肩を叩き、低い声で言った。「行きなさい、心配しないで、早期発見なら早期治療ができる。」
柴田治人は表情を取り戻し、冗談を言う余裕もあった。「検査は必要だね、まだ救える気がするよ。」
東山裕はずっとその場を離れなかった。彼も検査結果がどうなるか知りたかったのだ。
一通りの検査の後、医師はようやく柴田治人の病状を確定することができた。
「初期診断では白血病です。しかし、まだそれほど悪化していません。すぐに入院して治療を始める必要がありますが、治癒の可能性はかなり高いです。」
柴田治人は一瞬呆然とした。「白血病?」
「はい。」医師はうなずき、彼を慰めようとしたが、彼の言葉を聞いて言葉に詰まった。
「この病気って女主人公専用じゃないの?どうして僕に降りかかってきたんだ?最近は男主人公を虐める流行でもあるのか?」
医師:「……」
東山裕:「……」
柴田治人はとても楽観的で、自分は絶対に死なないと思っていた。この病気は必ず治ると。
そのため、東山裕が考えていた慰めの言葉は全く役に立たなかった。
白血病の一般的な治療法は骨髄移植だ。東山裕は帰り道で、夢の中の出来事をたくさん思い出していた。
柴田治人のことについては記憶が曖昧で、ほとんど何も覚えていなかった。海野桜に聞いてみる必要がありそうだ。
海野桜は柴田治人が白血病にかかったことを知り、非常に驚いた。
「どうしてこんな病気に?」
柴田治人はあんなに大きくて健康そうに見えたのに、おかしいと思った。
東山裕は沈んだ声で言った。「僕も彼が重病だったことをぼんやりと覚えていたから、今日は口実を作って彼を検査に連れて行ったんだ。まさかこんな病気だとは思わなかった。」
でも幸いなことに、完全に治る見込みがないわけではない。
現代の医療は進歩しており、白血病はもはや不治の病ではなく、治すことができる。
柴田治人の病状は早期に発見されたので、希望はさらに大きい。
「前世では彼が病気だったことを知らなかったの?」東山裕は不思議そうに尋ねた。
海野桜は首を振った。「知らなかったわ、一度も聞いたことがなかった。」
あの頃、彼女は東山裕を取り戻すことばかり考えていて、他のことには全く関心がなかった。
東山裕も彼女に何も話さなかった。