東山裕は彼を横目で見て、「食べないなら下がれ!」
くだらない話だ……
柴田治人は咳をして、相変わらず不良っぽく笑った。「食べるよ、どうして食べないことがあるか。裕兄がご馳走してくれるなら、罠だとしても食べなきゃな。」
「その風邪はまだ治ってないのか?」東山裕は何気なく尋ねた。
「まだだよ。」柴田治人は嘆息した。「俺はずっと女がいないから、体が弱くなってるんじゃないかな。一つの風邪が長引いて、良くなってはまた再発して、良くなってはまた再発して、はぁ……」
東山裕は言葉を失った。
何という論理だ、女がいないから体が弱いだって。
女が多ければ体が弱くならないとでも?
「女がいないなら、一人見つければいい。」東山裕は車を発進させながら彼と話し続けた。
柴田治人は窓の外を見て、笑いながら言った。「俺はそんなに身を清く保っているんだ、仙女でなければ従わない!」
東山裕は思わず笑った。「お前の目に映る仙女とは林馨のことか?」
「彼女が仙女かどうかは知らないが、仙女の影はある。」
東山裕は柴田治人の考えを理解していた。
林馨は確かに完璧すぎるほど完璧だった。外見、性格、能力、すべてが素晴らしい。
生い立ちと彼女の経験を除けば……
しかしそれは人の優劣を判断する基準ではない。
前世では彼も林馨の完璧さに目を奪われていた。もしあれほど多くのことが起きていなければ、彼女の本質を見抜くことはなかっただろう。
今世では、林馨はまだ悪いことをしていないので、当然誰も何も見抜けない。
柴田治人は優しい女の子が好きで、彼が林馨に魅了されるのも予想の範囲内だった。
しかし彼には、林馨が彼の選択肢ではないことを伝える方法がなかった。
とはいえ、これは縁次第だ。彼らが必ずしも一緒になるとは限らない。結局、一緒になるべきなら、とっくに一緒になっているはずだ。
東山裕は何気なく柴田治人と話していたが、レストランに着く直前に、突然胃痛を装い始めた!
柴田治人は緊張した。「裕兄、大丈夫か?」
東山裕は痛みに耐えながら言った。「薬を切らしたみたいだ。お前が運転して、まず病院に連れて行ってくれ。」
「わかった!」柴田治人は急いで車を降り、彼の側に回り込んだ。東山裕は助手席に移動し、二人はすぐに病院へ向かった。