ダックスは、母親が自分の好奇心に答えてくれるのを待ちながらワクワクしていた。
ベラは、優しくダックスの髪を撫でながら、微かに微笑んで言った。「ダックス、今まであの人のことを話さなくてごめんなさい。私にとって辛いことだから—」彼女の声は、心に何かが刺さるのを感じながら途切れた。
「大丈夫だよ、お母さん。わかってるよ」ダックスは温かい笑顔で答えた。母親が悲しむのを見たくなかったので、彼は母の手を握り、優しく叩いた。
ベラは、息子の思いやりの心を見て、むしろ一層悲しくなった。彼女は息子の前で泣かないようにした。
「お父様は、もし亡くなったと思っているなら、そうじゃないの」ベラは深く息を吸った。トリスタンのことをダックスの前で話すのがこんなにも難しいとは思っていなかった。「そして、お父様もこの国の出身よ」
ダックスの目が輝いた。
「でも、ダーリン、今はお父様の名前は言えないの」と彼女は言い、息子の目が曇るのを見た。
ダックスは何と答えていいかわからなかった。がっかりしたものの、ただ母親に頷くだけだった。
「これを話すのは、数日後にお父様側のひいおじいちゃんに会うことになるからよ。そうすれば、お父様とその家族のことをもっと知ることができると思うの」と彼女は言った。
その言葉を言った後、ベラは肩の重荷が下りたように感じた。詳しくは話せなかったものの、自分の不安を乗り越えたことを誇らしく思った。
ダックスはこの知らせに驚いた。彼の笑顔は広がり、目の輝きはさらに明るくなった。しかし、聞き間違えていないか心配だった。
彼は確認のため母の言葉を繰り返した。「ママ、お父様側のひいおじいちゃんにも会えるって言ったの?」
「そうよ」ベラは息子の興奮ぶりに面白くなった。こんな息子の一面を見るのは初めてだった—春のような笑顔がとてもかわいらしかった。
もっと早くお父様のことを話しておけばよかったと後悔した。
「そんなに会うのが楽しみなの?」ベラは彼のぽっちゃりした頬を撫でながら微笑んだ。
すぐにダックスの笑顔は消え、表情がゆっくりと冷静になっていった。
「ああ!!また トリスタン・モードになっちゃった、冷たくて距離を置くような」ベラは息子の表情が急激に変わるのを見て、心の中で笑った。