夜も更けてきたので、ルイスは別れを告げて帰宅した。ダックスも眠気を感じると言い、おやすみのキスをしてから二階に上がって眠りについた。
ベラは自室に戻り、ステファンに電話をかけて彼に依頼する仕事について話し合おうとした。
しかし、ナイトガウンに着替えてステファンに電話をかけようとした矢先、携帯電話の画面にトリスタンの名前が表示された。電話に出る前に時間を確認すると、午後10時30分だった。トリスタンからの着信に手が止まる。
ベラは遅い時間だったので電話に出ないことにした。
着信音が止まって安堵したのもつかの間、彼からのメッセージに息が詰まりそうになった。
[トリスタン]まだ明かりがついているのが見えるよ、ベラ(笑顔の絵文字)
[トリスタン]入ってもいい?少し直接話がしたいんだ。
ベラは深いため息をつきながら窓の外を見ると、彼が手を振っているのが見えた。
...
スニーカーを履いて急いで階下に降りると、一階はすでに暗く、隅にある黄色いランプが数個点いているだけだった。
普段は掃除をする使用人たちも仕事を終え、それぞれの部屋で休んでいるため、そこには彼女しかいなかった。
奇妙な感覚に襲われた。こんな遅い時間に一階に来たのは初めてで、祖父にトリスタンと会っているところを見つかるのではないかと心配だった。
「まったく!まるで恋人と密会する10代の少女みたい!」彼女は可笑しくなった。
ベラは音を立てないように気をつけながら玄関へと向かった。しかし、ドアを開ける直前、コートを着るのを忘れてナイトガウン姿のままだということに気づいて手が止まった。
外に出るのを躊躇したが、上階に戻って着替えるのも面倒だった。
「ちょっと話すだけよね?」ベラはそう考えながらドアを開けた。すると、ドアのすぐ前に立っているトリスタンの姿に驚いた。
「あ...トリスタン」ベラが挨拶をした。彼の端正な顔立ちを間近で見ると、また心臓が変な音を立て始めた。
ドキッ!
ドキッ!
ベラは激しく鼓動する心を落ち着かせようと、視線をそらしながら気を紛らわそうとした。しかし、頬が徐々に熱くなっていくのを感じた。
「話すことがあるんでしょう、トリスタン。急いでください。眠いので」彼を見ずに、まるで彼の存在に煩わしさを感じているかのように言った。