二人の顔は近く、目線が同じ高さで合った。彼は彼女の驚きに気付いたが、拒絶の兆しは感じられず、それが彼を喜びで満たした。手を伸ばし、乱れた髪を優しく払いのけた。再び、トリスタンは胸が大きく膨らみ、ベラが全く止めようとしないことに温かさを感じた。
彼は彼女の髪を整え終えると、もう一度愛情のこもった笑顔で彼女の目を見つめた。
「ベラ」とトリスタンは言った。温かな笑みが彼の唇にゆっくりと広がり、続けた。「僕は何度も言ってきたよね。君とダックスのためなら何でも捨てる覚悟があるって。家族が僕の唯一の大切なものだから」
「ト、トリスタン、でも―」
トリスタンは指でベラの言葉を遮り、少し乾いた赤い唇を優しく撫でた。
「君が罪悪感を感じているのは分かるよ、ベラ。でも、そんな風に感じる必要はないんだ...」