3人はついにビーチハウスを後にした。
トリスタンは人目を引かないように、一人で運転することにし、高級車ではなくSUVを運転した。ノヴァシティでよく見かける車種だ。
太陽が輝き、外で過ごすのに最適な気温だった。寒すぎず暑すぎず、日差しも十分で湿度も丁度良かった。
しかし、ビーチハウスを出てから10分後、公道に入ると、ベラは2台の車が数台後ろの距離を保ちながら、彼らの車が曲がった最後の2回の曲がり角を同じように曲がってきていることに不審を抱いた。
ベラの疑念は更に深まった。なぜなら、その2台の車には何度も追い越すチャンスがあったのに、1台しか追い越さなかったからだ。
次の曲がり角で、後ろに残った1台は別の方向に曲がったが、しばらくすると、先に追い越した車が再び彼女の車の後ろに現れた。
2台の車は交互に入れ替わりながら、彼らの車を追跡し続けた。
最近、マフィア組織に身元を追跡されていることを警戒していたベラは、非常に警戒心を強めていた。彼女は不審な2台の車の入れ替わる動きを注意深く観察し続けた。
「ダークスカルが、ここまで私を追ってきているの!?」彼女は、ダックスが一緒にいることに神経を尖らせた。ダークスカルが息子の存在を知って、彼を危険に晒しているのではないかと心配だった。
彼女はすぐにはトリスタンに告げず、数分間後続車を見続けた。道が混雑してきても、尾行車両を見失うことはなかった。
しかし、交通量が増え、何度か曲がっても、その車は彼らの車を追い続けていた。
ベラはもう我慢できず、トリスタンに近寄って囁いた。
「後ろの2台の黒い車に気付いた?」
彼女はかすかな声で話し、トリスタンにだけ聞こえるようにした。ダックスに聞かれたくなかった。彼が好奇心を持ったり、怖がったりするかもしれないから。
トリスタンはバックミラーで素早く一瞥し、ベラの言及した車を確認した。そして彼女を見て、頷いて応えた。
「あの車たち、ビーチハウスを出てから私たちを追ってきているの。良からぬ人たちじゃないかと心配だわ。振り切れる?」
彼は彼女の心配そうな声を聞いて微笑んだ。「心配しないで。あれは僕のボディーガードだよ」と彼は何気なく言ったが、ベラには彼の声に苛立ちが感じられた。