027 物を盗む

矢崎粟と小島一馬は村の環境に慣れていましたが、この時間帯は多くの人が畑仕事をしていて、人影はまばらでした。家にいる人もほとんどが年配の方々で、矢崎粟は一人一人に挨拶をし、世間話をしました。

良好な関係を築く第一歩は、世間話から始まるものです。

小島一馬は矢崎粟の傍らについて歩き、矢崎粟が自己紹介すると、彼も自己紹介をし、少し恥ずかしそうな様子でした。

手伝いが必要な場面では、矢崎粟は可能な限り真剣に手伝いをしました。

村人たちの目には、彼女は生活体験に来た芸能人というよりも、彼らの傍らで育った少女のように映り、親しみと愛着を感じるようになりました。

そうして数軒を回るうちに、矢崎粟の手には卵や干し肉、乾物など、村人たちからのお礼の品が大小の袋に入って溢れていました。