032 竹籠を編む

矢崎弘は片方で怒っていたが、矢崎粟の方では既に新しい仕事を始めていた。

昨日は草むしりで、今日は村の老職人について竹かごの編み方を学び、今日編んで明日町で売るのだ。売り上げは全て彼らのものとなり、食料品や生活用品の購入に使え、その使い道は彼ら次第だった。

矢崎粟は目の前のおじいさんが素早く竹ひごを編んでいく様子を真剣に見つめ、心から感心した。竹ひごは処理済みとはいえ、手への負担は大きかったが、おじいさんは手袋もせずに痛みを恐れることなく、器用に素早く編んでいく。これは数十年の経験があってこそ到達できる域だった。

他の人々もおじいさんの手さばきを目を見開いて見つめ、手にした竹ひごをどう扱えばいいのか分からない様子だった。

仕方なく、みんなはおじいさんにもう一度ゆっくりと教えてもらい、それから実践を始めたが、学んだことをうまく活かせない様子だった。

矢崎粟はこの点については良かった。彼女の師匠は現代社会で占いや算命をする人で、時々山に薬草採りに連れて行ってくれ、普段は二人で竹かごを編んだりしていた。目の前のおじいさんほど複雑なものは編めなかったが、それでも基礎はあった。

矢崎粟は何度か試し、分からないことを恥ずかしがらずに質問した後、ようやくコツを掴み、それを一つ一つ自分のチームメイト三人に教えた。

「粟、なんでも出来るみたいね。こんな難しい竹かごも、すぐに覚えちゃうなんて。」

森田輝は矢崎粟の指先から目を離さず、彼女の動きを真似て自分の竹ひごも並べていったが、自分が編んだものは矢崎粟のものとは別物のように感じた。

「そうよね粟、まるで才女みたい。私たちが思いつかないことでも、あなたには出来ないことがないわ。」伊藤卓は人見知りな性格で、この二日間で皆と親しくなり、話し方もより親しみやすくなっていた。

「そんなに大げさじゃないわ。これは小さい頃に養父から習ったから、少し基礎があるだけよ。みんなも練習すれば、すぐに私より上手くなるわ。」

矢崎粟は、この番組に来てから周りの仲間が惜しみなく褒めてくれることが、矢崎家での経験とは全く違うと感じた。家では料理を習っても、両親や兄からの厳しい目は矢崎美緒と争うためのものでしかなかった。

「彼らの言う通りだよ。君は本当に凄い。」