057 自力更生

「どういたしまして」矢崎粟は甘く微笑んだ。

森田輝は遠慮なく彼女の頬をつねり、少し歯がゆそうに言った。「粟、このままじゃ芸能界で生きていくのは難しいわよ。早く信頼できる芸能事務所を見つけた方がいいわ!」

森田輝は小島一馬を見てから、神秘的な様子で矢崎粟に小声で言った。「小島家傘下の宜興エンターテイメントはいいと思うわ。小島家を後ろ盾に、紫音より歴史があって、アーティストの扱いも紫音より良いわ。それに小島一馬は今あなたをかばってくれてるし、あなたが頼めば断らないと思うわ。小島一馬が一言言えば、あなたの条件と商業価値なら、宜興も断る理由はないでしょう。」

「その通りだけど、私は自力でやっていきたいの。自分のスタジオを準備してるところなの。」矢崎粟は森田輝の好意を理解しつつも、この提案を断った。